第4話 慈愛
部屋に帰ると亮介はことの
「え、あの時から?」
「どおりで……なるほど」
「やだ〜、もう」
綾乃も薄々何か不自然だと感じていたのだろう。さほど驚きもせず、話の後半からはむしろ楽しんでいる様子だった。
「でも、画像は要らないかも」
「え、だってそれがないと綾乃が選べ……まさか」
「なんか若い子だといろいろハードル下がるみたい」
ペットボトルのポカリスウェットを飲みながら、いつものカマボコ型の目で微笑む綾乃だった。
◆
「え、全員OKだってよ!? マジか!」
「いよっしゃああああぁ!!」
帳場横の休憩ルームで快哉の雄叫びをあげてしまった学生たち。
「シーーーーーッ! お静かにお願いします」
(あ……すみません)
宿のスタッフに注意され急に現実に戻された5人。長身のKが小声で言う。
「ちょっと待てよ……」
「何、どうした? まさかお前実は童貞でしたとか言うなよな〜」
Mがからかうのを無視してKが続ける。
「この中に、複数って経験ある奴いんの……?」
全員の目が点になる。
「ま、まぁ、まあなんとかなるって。ここにはAV王のYもいるし」
Dが努めて明るく振る舞う。当のYは目をぱちくりしている。
◆
PM23:00。約束の時間に二人の部屋をノックする。
「いらっしゃい、はいどうぞどうぞ」
亮介が迎える。廊下を抜けると畳の部屋の真ん中に敷き布団が二つ並んでいて、綾乃が正座して待っている。
「こんばんは。まだおやすみなさいじゃなかったね」
緊張の面持ちで5人が部屋の隅に小さく座る。様子の変化に気づいた綾乃が声をかける。
「どうしたの、なんか元気ないみたいだけど……大丈夫?」
Dが状況を説明すると綾乃はプッと吹き出した。亮介は横で微笑んでいる。
「ごめんね、笑っちゃった。でもそうだよね、未体験のことだし緊張するよね」
「はい!」
5人同時に返事をする。綾乃にはそれがまた可笑しくてたまらなかった。
「なんかかわいい〜。いいじゃない、もしできなかったとしても気にしないから楽しんでもらえたら嬉しいな」
学生たちの顔がパッと明るくなったように見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます