ペンギンのお悩み。
「ユウキさん。いつもぼくのえをかきにきてくれるおねえさんがいるんだけど、これってみゃくありってやつかなぁ?」
ペンギン、人間に恋をする。
脈あり、なんて想像もしない言葉を言われて俺は笑顔をひくつかせた。
「……えっと、君はどこでその言葉を覚えてきたのかな?」
「えらいおねえさんだよ!」
「偉い……ああ、瀬戸田さんか」
瀬戸田さんはたまに顔を出しては、俺のことをペンギンの親分とからかうようになった。それも俺のカウンセリングは
「たぶん、絵を描きに来てる人は、ペンギンを描いてるんだよ」
「ペンギン?」
そもそもこれはカウンセリングだろうか? 幼稚園か小学校の先生が子供たちに道理を教える行為に似ていない苦もない。
「きっと君たちの集団を描いてるんだってこと」
「ぼくがかわいいから⁉」
「……そうだね。そうかもね」
ペンギンは短い足──実は羽毛に隠れているだけで足はすごく長いのだと瀬戸田さんが言っていた──で左右に揺れながら、あたりをはねるように歩き回る。
「やったぁ! ぼくじまんしてくるね!」
「うん、行ってらっしゃい」
魚臭いことだけが難点だが、毎日ふわふわの動物に囲まれて、
「えっと、次のペンギンの方ー」
ペンギンたちに絶賛されている病院スタイルで、次のカウンセリングの相手を呼ぶ。
そのペンギンは隊列を組むときに決まって俺の真後ろに、つまりペンギンたちの先頭に立ってついてくるペンギンだ。
「よう、かしま」
「こんにちは。今日も、お昼の魚がおいしかった話か?」
「ああ、きょうもかわにだんりょくがあって……ってちがう!」
違うのか。
このペンギンはいつも魚の食レポをしてくれる。この子なりのコミュニケーションなのかは知らないが、あいにく俺は生魚を丸のみする趣味はない。皮を食べるのも焼き魚だけだ。
それが今日の要件は違うと来た。さっきのペンギンと同じ、恋愛相談か?
「かしまがきてくれてからにしゅうかんたった」
「二週間って……もうそんなに経つか」
「そうだ。そこでそうだんしたいことがある」
二週間記念のお祝いとか言われたら俺、泣いちゃうかもしれない。できればサプライズで進めてほしかったが……そんなことを頭の
「おれたちはこのすいぞくかんをだっそうしようとおもう」
「うんうん」
「だっそうしようとおもう」
「……うん? 脱走? 水族館から出たい、ってこと?」
水族館から出たい?
いやそんな相談されましても、手伝ってやれないが。
ペンギンたちがここでの活動を快適にするために俺は呼ばれたわけだ。それでペンギンたちが脱走したとなれば、俺はどうなる。社会的に
「いや! 脱走はやめよう」
「なんでだ」
「俺がすごく困る。それに俺は相談係ではあるけど、カウンセラーっていうのが本職なんだ。脱走の相談には付き合えない」
「わかった。じゃあ、おれたちだけでだっそうのけいかくをすすめる」
「ちょーっと待てい」
てとてとと
ペンギンは俺の腕の中でバタバタと手を動かす。
「わーはなせ!」
「脱走は絶対なしだ。約束してほしい。そうじゃないと俺はまた無職になるし、何なら永遠に無職になる!」
「そうか。かしまがそんなにこまるというなら、しかたないな」
「わかってくれて何よりだ」
リーダーペンギンを床に下ろしてあげると、ささっと毛並みを整えた。そしてその可愛い手を振ってくれる。
「じゃましたな」
「どうも。また何かあったら相談に来てくれよ」
「おう」
そしてリーダーペンギンを説得できたと思った。
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