第13話

ルークは足早に父マルクの寝室へ向かった。廊下を駆け抜け、寝室の扉をノックする。


「父様、起きてください。緊急の報告があります!」


数秒後、寝ぼけた声でマルクが応じる。


「ルーク…こんな時間にどうした?まさか何かあったのか?」


扉が開き、寝間着姿のマルクが現れる。ルークは手紙を見せ、状況を急ぎ説明した。


「父様、この手紙です。明日の鉱山視察で、カムリ男爵家が暗殺を企てていると。」


マルクは手紙を受け取り、暗い廊下の灯りの下で目を凝らして内容を読み始めた。その表情が徐々に険しくなる。


「…落石事故に見せかけて、か。まさか我々に対してここまで大胆な計画を…」


マルクは低く息を吐き、すぐに冷静さを取り戻すと、ルークに向き直る。


「ルーク、我々は計画を逆手に取る。カムリ男爵家に出し抜かれるわけにはいかない。だが、正面から仕掛けるのではなく、彼らが犯行に及ぼうとする瞬間を押さえ、証拠を掴むのだ。」


ルークは小さく頷いたが、不安が拭えない様子で尋ねる。


「ですが、どうやって…?鉱山の崖付近は危険ですし、万が一彼らが仕掛けた通りに落石が発生すれば…」


マルクは考え込みながら少し歩いたが、やがて何かを決意した表情で立ち止まった。


「我々も護衛を増やし、鉱山周辺に隠れて見張りを立てる。そして、計画が進行している証拠を得た瞬間、彼らの犯行を暴く。これでこちらが正当な立場で行動できる。リル公爵はこの時最前列を進んでいる。その時にすぐ報告し、現行犯で罰することが出来る。また、彼が動けば、カムリ男爵家も逃げ道を失うはずだ。」


ルークはその提案に少し安心したような顔を見せた。


「分かりました、父様。私も護衛隊に指示を出し、計画の準備を進めます。」


マルクはルークの肩に手を置き、少し微笑んだ。


「頼んだぞ、ルーク。明日は慎重に行動するんだ。決して無理はするな。」


ルークは頷き、素早く寝室を出ると護衛隊に指示を出すために動き出した。


翌朝、鉱山へ向かう準備が整い、ルークたちは護衛を引き連れて、リル公爵家を先頭にした大列に並び出発した。カムリ男爵家は予定通り、ナート男爵家の前を進む。鉱山への道中、ルークは周囲の警戒を怠らず、険しい崖の上や影に隠れる可能性のある場所に目を光らせていた。


しばらくして鉱山の崖付近に差し掛かると、ルークはふと護衛に合図を送り、進行を遅らせる。そしてその瞬間、崖上の岩陰から怪しい気配を感じ取る。


「…やはり、待ち伏せがいるな。」


小声で呟いたルークは、マルクの指示通りに慎重に動きながらも、策を練っていた。そのため、すぐに護衛の一部と共に気づかれないように崖上に向かう。


ナート男爵家の隊列は少しずつ進む。

少しでも対応が遅れれば、マルクの命が危ない。

そして急いで崖上に上がると巨石を落とそうとする集団の姿が見えた。


「あと少しで、落下地点にナート男爵家一行がくる。私の合図で落とすんだ。」


集団のリーダー格の男が話していた。

そしてルークは集団の服装をよくよく見る。そしてあるものを見つけた。カムリ男爵家の家紋である。


「カムリ男爵家の犯行は確定的か…」


ルークはそうつぶやくと護衛に指示を出した。


「よし、みんな。奴らの無力化を指示する。ゆけ!」


そう言うと護衛たちが一斉に集団に襲いかかる。


「な、何者だ!てっ、撤収…」


リーダー格の男が指示を出す頃には既に集団の確保に成功していた。


そしてその頃、崖下のナート男爵家の隊列は落下地点を通り過ぎた。


「よし、リル公爵に伝令を!カムリ男爵家が暗殺を企てていたと!」


ルークは無事暗殺を阻止した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る