第12話

リル公爵をルークの部屋に送り届けた執事ダンテはリル公爵の命により、カムリ男爵家が泊まる部屋のその隣の部屋で聞き耳を立てる。


老執事であるダンテだが、実は元国王の護衛部隊長を務めていた男だ。その為、この手の諜報活動もお手のものである。

部屋の中からナート男爵家の暗殺、落石事故の計画を耳にする。


「決行日は明日ですか…それにしてもこのリル公爵領でそのような行為に及ぶとは看過できませんね。」


ダンテは部屋を後にし、再びルークの部屋に向かった。ちょうどルークの部屋の前まで来るとリル公爵がルークとの会合を終えたばかりで部屋を出てきたところであった。


「旦那様、」


「うむ、部屋で聞こう。」


そう言うと2人は本邸にあるリル公爵の執務室に入った。


「それで、どうだった?」


「はい、カムリ男爵及びアルベールはナート男爵、ルーク殿の暗殺を明日の鉱山視察で実行するようです。落石事故とみせかけるようですが…」


「なるほど。まさかこのタイミングでか…」


「すぐにでも手をうちますか?準備は出来ておりますが…」


「いや、待ってくれ。我が家が手を下しても良いが、ここはナート男爵家に成敗してもらうのはどうかな?」


リル公爵はダンテに提案する。


「なるほど、敵対勢力同士でということですか…ナート男爵家が成敗すれば綺麗に収まり、ナート男爵家によるカムリ男爵領の統治も他家から承認されるでしょう。」


「あぁ、そういうことだ。では、ルークくんに伝えてきてくれ。そうだな…手紙を部屋の前に置いておくのが良いだろう。匿名でな…」


「は、承知しました。また、念の為、我が家の部隊も鉱山周辺に配置しておきます。」


そう言うとダンテはすぐに執務室を後にした。


「頼むよ、ルークくん。」


リル公爵は1人部屋で呟いた。


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ルークは別邸の寝室でそろそろ寝る予定であった。しかし、突然部屋の扉がノックされる。


「どうぞ!」


ルークは入るように促す。

しかし、待てど部屋に入ってくるものはいなかった。


「全く、なんだよこんな時間に…」


そう言いつつルークは部屋の扉を開けた。


しかし、部屋の前には誰もいなかった。


「あれ?」


ルークは廊下を左右見る。

しかし、誰もいない。

そしてルークは足元を見た。


「ん?手紙か?」


ルークは部屋の前に置かれた手紙を手に取り、扉を閉めた。

そして椅子に座り、手紙を開ける。


______________________________

ナート男爵家

ルーク殿


明日、鉱山視察にてカムリ男爵家が貴家の暗殺を企てております。実行場所は道中の崖。落石事故に見せ掛けた暗殺です。ご用心を。

______________________________

と記されていた。


「リル公爵が言ってたことがこんなにも早く訪れるとは…すぐに父様に報告しなければ。」



ルークは急いでマルクの寝室に向かった。




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