第11話

社交会は滞りなく終わり、今夜はリル公爵家の本邸横にある別邸に泊まることとなっていた。


ルークも一人部屋が準備されている。

部屋は公爵家ということもあり、かなり豪華な作りとなっていた。そんな部屋に客人が訪ねてきた。


「ルーク殿、リル公爵がお越しです。」


リル公爵家の執事ダンテが声をかける。

なんと訪ねてきたのは公爵本人であった。


「どうぞ、お入りください。」


そう言うとリル公爵が部屋に入ってきた。


「すまない、突然訪ねてきて。」


「いえ、どうぞお座り下さい。」


そう言うとお互い対面で席に座る。


「実はルークくんに相談があってきたのだよ。」


「ご相談ですか??」


「実は、カムリ男爵家のことなのだよ。先程の社交会で君も感じただろう。アルベールが君に敵対心をむき出してた。」


「まぁ、そうですね。事前に父からも聞いていましたが…」



どうやら公爵もカムリ男爵家の事をよく思っていないらしい。


「そのカムリ男爵家がナート男爵家を潰そうとする動きがどうやらあるようなんだ。」


「そうなのですか!?」


リル公爵の言葉にルークは驚く。


「カムリ男爵家はナート男爵家と並びこの南部では最下位の貴族家だ。しかし、例えばどちらかが片方をのみ込めばどうなると思う?ハリス子爵家、バース子爵家と肩を並べる勢力になるのだよ。」


「なるほど、リル公爵は力の偏りに危惧されてるのですね。」


「あぁそうだ。カムリ男爵家のあの野心むき出しの姿勢は南部の他家の間でも懸念事項になっている。逆にナート男爵家がカムリ男爵家をのみ込むならばまた話は違うがな。」


リル公爵の懸念をルークはよく理解できた。


「とりあえず、ルークくんには現状を知っていてほしいかった。いつ向こうが仕掛けてくるか分からない。まぁ、向こうが仕掛けてきた場合、リル公爵家はナート男爵家を支持するがな。長居したね。今夜はこれで失礼するよ。」


「リル公爵、ご忠告ありがとうございました。」


こうして2人の面会は終わった。


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一方、同じ別邸のある一室ではカムリ男爵家当主であるネバム・フォン・カムリとその息子アルベールが話をしていた。


「父様、あのルークって奴はいけ好かない。カムリ男爵家の方が力があるっていうのに…」


アルベールがルークの印象を話す。


「そうか息子よ。ナートなんぞカムリが潰してくれるわ。聞くところによると良い収入源もあるようだ。取り込むには絶好の時期だろう。」


カムリ男爵は不敵な笑みを浮かべる。


「明日、リル公爵家の鉱山を視察することになっている。そこに南部の全ての家が招待されている。そこでナート男爵家には消えてもらう。」


「父様、どのような手段を?」


「鉱山へはかなり入り組んだ崖を通る。そこで落石事故と見せかける。鉱山へは当然、上位貴族から列をなして進む。つまり最後尾はナート男爵家。そこを狙うのだ。」


「さすが父様。素晴らしい案です!」


「アルベール、このことは決して他言無用だ。カムリ男爵家の人間であってもだ。実行役には既にこのことは伝えている。あとはその者に任せておけば良いのだ。」


「はい、承知しました。」


アルベールが承諾すると、お互いに高らかに笑いあった。

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