第3話

ルークの頭の中にはこの状況を脱却するための案が既にあった。

この案はサナの一言に起因する。

大通りの花屋と酒場などの閉店である。


「父様、閉店した店舗をナート家で買い取れますか?」


「店舗の買取?まぁ、ナート川の追加予算も必要なくなったことだし、可能ではあるが…一体何を?」


マルクはルークに問う。


「ナート男爵家で新たな店舗運営に乗り出したます。」


「我が家が店舗運営!?」


マルクはかなり驚く。

貴族の家が店舗運営を直接行うことはそう珍しくないことである。例えば貴族直営の商会を作り、引退した領主がトップに就き運営するパターンがある。しかし、ナート家は男爵家である。商会を持つ貴族は全て上位貴族と言われる伯爵以上であることからマルクの反応は当然のことだ。


「ルーク、我が家はかなり貧しい貴族家だ。そのような危険を犯すことはできないが…」


マルクは現実をルークに話す。

しかし、ルークはすぐ反論した。


「父様、このナート家は貧しい。それは間違いないです。しかし、希望はあります。ナート領は人はいないし寂れてる。土地や家屋などはとても安く買えます。安く買えたらその分投資に回せます。1度、僕に任せてもらえませんか?」


ルークは熱く語り、マルクに訴えた。

しかし、マルクは首を縦に振らない。現実主義者であるマルクは頑として譲らないのだ。


そんな状況を見たサナが口を開いた。


「マルク、ルークはとても真剣よ。」


「いや、しかしリスクが大きすぎる。」


「そこで提案があるわ!一度に複数店舗の運営はなかなか大変さもある。そこでまずは1店舗をルークに任せるのはどうかしら?」


サナはマルクに提案する。


「なるほど、まずは1店舗で軌道に乗れば次の店舗か...」


「どうかしら?これならリスクも最小限に抑えられるわ。」


サナがそういうとマルクはしばらく考え込んだ。

そして5分ほど無言の時間が流れる。その間ルークはマルクをじっと見つめていた。


「…わかった。まずは大通りの花屋を買取、そこで店を構えなさい。」


「ほ、ほんとですか!?」


「あぁ、だがひとつ条件がある。」


「条件ですか?」


「うむ、最初の月の売上が赤字となった場合、即時撤退だ。」


「最初の月で!?」


ルークは驚く。最初の月で結果を出せということだからだ。

マルクがこう強く出たのには理由がある。

このナート男爵領で店舗運営をすることはかなり難しいからだ。人口も少なく、寂れ、人通りも少ない。

早く見切りを付けられるようにするためである。


「どうだ?それでもやるか?」


マルクはルークに問う。

かなり不利な内容だ。ルークはサナの顔を見る。するとサナは笑顔で首を縦に振った。

これをみてルークは決心する。



「はい!やります!必ず良い結果を出します!」


こうしてルークは新たに店を構え、ナート男爵領の活性化に動き出した。

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