明るい・陽気

*浮き立つ【2024/12/05】

 こんなに心が浮き立つのは何時ぶりだろうか。


 なんてったって、行く先は文字通り約千年ぶりに会う友人の元だ。自身が人間として生きていた頃は何度も遊びに行ったものだが、それも妖街道に引っ込んでからは一度も訪れていない。果たして彼は僕の事を覚えているのだろうか。烏は頭が良いはずだし、心配する必要も無いだろうけど。


「随分と楽しそうですネ、晴明様」


 おっと、思わず顔に抑えきれない気持ちが出てしまっていたらしい。何処か呆れたように笑う美藍に笑声だけを返して、僕は更に足を進める。この先は彼らの領地だ。

 あぁそう言えば、緋月の服装を改めさせるのを忘れていたな。まぁ僕が居れば問題は無いだろうけど。迎え撃つのが彼であれば僕の事に気が付くだろうし、万が一彼で無くても返り討ちにするのは簡単だ。


(――おや?)


 案の定、遠くから一本の矢の様に尖った妖気と殺気が飛んでくる。だが、それは彼のものと似通っているのに彼のものとは何かが違う。何と言うべきか、妖力の深さが違うのだ。まるで、僕と緋月の妖気の違いのような――……。


「……成程、二世か三世という訳か」


 僕は一つの事実に気が付いて、仄かに呟いてから笑う。いや、あまりにも面白くて自然と口角が上がった、という方が正しいか。

 彼が僕に気が付いているかどうかは、飛んでくる殺意が明白に告げている。あはは、面白い! それなら派手に暴れてやろうじゃないか。


 さぁ、勝負だ天嵐君!

 僕はあの時よりも更に強くなったんだ。

 果たして、君の育てた者たちの腕は如何程かな?

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