◈目の中に入れても痛くない【2024/11/12】

 ジェノは、目の中に入れても痛くないくらい可愛い弟なんだ。


 なぁ、知ってるか、神様。いっつも俺の後をついて回って、俺の一挙一動に興味津々な可愛い弟なんだぜ。からかうと顔を真っ赤にして怒るところも、知らんうちに仲良くなってたらしい銀嶺さんに、こっそり俺の事を自慢してるところも、めいいっぱい褒めてやると何だかんだ嬉しそうな顔をするところも、全部全部可愛いんだ。


 なぁ、聞いてるか、神様。だからさ、こんな所で死なせないでくれよ。お願いだから、ジェノを一人で置いて逝っちまう事だけはさせないでくれよ。ぼんやりしていく意識も、無くなっていく身体の感覚も、全部嘘だって言ってくれよ。


「……ぁあ、しにたく、ねぇ……なぁ……」


 柄にも無い、非科学的な存在への祈りは届かなかったらしい。自分のものとは思えないほど掠れた声は、情けないくらいに震えていた。もう感覚が無いから分からないけど、泣いているのかもしれない。


 嗚呼、死にたく、ない。約束したんだ、俺は。

 必ず、ジェノを守ると、約束、した、のに――……。


「…………じぇ……の……」


 暗転。

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