47 その後
後始末の話をしよう。
まず、兵士たちに死人はいなかった。
もともと私は、生き残ることに充填を置いて彼らを鍛えていたから、これは当然だ。
けが人は多かったけれど、生きてさえいれば治療できる。
父様や母様も、当然無事。
他の使用人たちも、ほとんど怪我はなかった。
無論、お腹の赤ん坊も。
驚いたのは、ミイが一人で魔神のマナを取り込んだダスタウラスに勝利したこと。
あれから随分と鍛えたつもりではあるけれど、そこまで強くなっているとは。
加護を有効に使ったらしい、今度本気のミイと仕合せてほしいものだ。
母様は私の生還を喜んでくれた。
もともと、母様には今回のことをはなしてはいなかったけれど。
なんとなく予感はしていたらしい。
子供ができたから、だけではなく。
私が無茶をすると思ったから、ああいうことをはなしたのだろう。
父様は、流石に色々と私を叱った。
無茶をしすぎだと。
解っていても、肝が冷えたと。
流石にこれは正面から受け止めよう。
父様が自由にしていいと言ったからこそ、ザガンとの決戦に踏み切ったわけだが。
それにしたって、想像以上に規模が大きくなってしまったからな。
ともあれ、身内に関することはこれくらいだ。
問題はその後の方。
流石に、アレだけの閃光が夜空に瞬いたのはまずかった。
目撃者は相応にいて、色々と父様は話を聞かれていた。
といってもまぁ、世間的にはなにかの見間違いだろうというのが大半で。
父様も、その方向で周囲に説明していくらしい。
ただ、騎士団の一部の人間と、それからごく一部の貴族には色々と話がいったそうだ。
具体的には、以前屋敷にやってきていたドラウェル伯爵。
後は、ルプラス伯爵とか。
ただ、それに関しては向こうも隠していることがある。
魔神が本当の意味で討伐できていないというのは、民衆に知られたらそこそこ問題になる案件だ。
故に必要なのは、お互いの痛いところを突くのではなく、すり合わせ。
理性的な、意見交換だった。
幸い、これに関しては上手く行った。
というか私の方針を丸ごと話して理解を得た。
人類の守護者たる貴族や騎士団的には、もう少し私に英雄をしてほしいのだろうけれど。
私にとって今のところ守るべき存在なのは、クルセディスタの人間だけ。
魔神相手には弱みを見せたらつけあがるだけなので否定したけれど。
最悪、魔神領に一人で旅立っても何ら問題はないのだ。
それをさせるくらいなら、ある程度は自由にさせたほうがいいだろうと思ってくれるくらい、向こうが理性的なのもよかったな。
ただ、残念ながら会いたかったルプラス伯爵には会えなかった。
未だ魔物が聖都へ侵入してきたことの対策が完璧ではないのだとか。
まぁルプラス伯爵に話したかったことは、すべて話した。
おそらく、私が騎士学校に入学する頃には、向こうも落ち着いているだろう。
その時に話せば問題ない。
なお、私のこれからの方針に変更はない。
騎士学校に十二になったら入学する。
そこで騎士団とのコネクションを構築し、卒業したらある程度自由に行動するのだ。
今回の話し合い以外の内容は、このときに共有すればいいだろうということになった。
ドラウェル伯爵達も忙しいし、私もクルセディスタの兵士を育てる仕事があるからな。
なんでもこの兵士たち、各地で高い戦果を上げているらしい。
騎士学校へ入学するまでの間、各地を回って魔神の残滓を消すのはどうかという行動案もあったが。
貴族の私が理由もなくうろつくと問題になるため、残滓に変化があるまでは様子見ということになった。
私が聖女の器である以上、私が残滓に近づけば配下の魔物が私を器にするべく行動する。
そうなると、騒動になって私の存在を隠蔽することが難しくなるそうな。
それだったら、クルセディスタに残って兵士を育ててくれたほうが人類にとって有益だろう、ということになったのだ。
かくして、諸々の後始末は終わった。
それまでの間、マナの成長以外にできる鍛錬がなく。
色々とフラストレーションが溜まって、ようやくそれを発散できると思った頃。
私は、夢の中で女神にあった。
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