第19話
花園 小雪 視点
玄兎とコーヒーを飲んで少しだけ意地悪をした後、屋上に向かっていた。このホテルの屋上は心地よく風が吹いていてとても気持ちが良
い。
そして市場の様子なども見えていて楽しいのだ。玄兎が市場に行った様子も少しだけ見えたいた。道に迷うのではと少しだけ心配だったのだが無事に行けたようで何よりだ。
そんなことを振り返っている間に屋上に到着する。そこには誰もいなくて私だけの世界のようだった。
にしても先程の玄兎は少しだけ可愛かった。初めて会ってからそんなに時間は経過していないが愛着が沸いている。
あの爆発があった時も自ら全線へと出てくれて不覚にもかっこいいと思ってしまったのだ。流石に私から言うのは恥ずかしいのでバレないようにしたい。
「でもまぁ……少しだけ妬いちゃうな」
私だけを見てくれたら嬉しいのになんて考えるようになった私の思考回路に驚きだ。玄兎は桜田陽和のことが好きなのだろうか。それとも誰か知らない人だろうか。
彼の普段の死んだような真っ黒な目に光を灯すのは一体誰なのだろう。
「私だったらいいのに」
柄にもなくそんなことを呟く。この世界のことが好きだし平和も好きだ。
だから、それを壊すような人に裁きがくだせるように強くありたい。
けれども、傷付いた誰かに優しくできるようにありたい。
ずっとそう思って生きてきた。
だけど、その寄り道にこの感情に名前をつけるぐらいは許されるだろうか。火照った顔を冷やすように目を閉じて風を感じるのだった。
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