第17話
そして、俺と花園様の部屋に戻る。荷物もあったし慣れない町を歩いてきた少し疲れた。ここ最近で見慣れた部屋に来て一気に疲れが来た。
「おっ玄兎、もうよかったの?」
「あっはい。ありがとうございました」
そんな会話をしながら花園様がこちらに寄ってくる。何しに来たのだろうと疑問に思いつつ突っ立ていると花園様の顔がニヤついていることに気がついた。
「で?あの子この事好きなの?」
そんな突拍子の無いことを言い出した。想定していない質問に驚いて何も言えない。何でそんなことを聞くのだろうか。
「どうなの~好きなの?」
ニヤニヤとした顔で迫ってくる花園様。ドアの前に立っていたため逃げ場がどこにもない。荷物で顔を隠しながら言う。
「陽和は俺を助けてくれた存在で……だから恩義があるんです。なのでそんな感情ではありません」
「どうかな。じゃあ、何で顔を隠しているの?」
上げている腕を無理やり下ろそうとする花園様。いくらなんでも、俺の力に勝てる訳が……
「何で顔を隠してるの?もう、それが答えでしょ」
思ったより力が強い。上げていた腕が顔よりも少しづつ下がっていく。力で勝てない。そして完璧に腕を下ろされて花園様が驚愕する。
「えっ玄兎、顔……真っ赤」
だから顔を隠していたんだ。それがバレないように。さっきから顔が熱いしきっと相当、赤いのだろう。恥ずかしくて耐えられなくてベッドの中に潜る。
慌てて追いかけてくる足音がする。それに構わず力いっぱい布団を握る。
「玄兎、ごめんって。拗ねないでよ」
「…………」
本当に違うのに。恩義は感じているが好きとかそんな感情ではないのに。そんなことも気がつかないない花園様なんて知らない。
その後もずっと花園様が布団の外から話しかけてきた。しかし、急に止まった。耳を澄ませる。
それは急だった。布団の中にこもった空気が一気に消えて外の景色が視界に飛び込んできた。何が起こったのか分からなかった。どうやら花園様が俺が被っていた布団を剥ぎ取ったみたいだ。
「えっ」
理解ができず変な声が出てしまった。花園様が布団を抱えていた。
「ごめんって……玄兎の好きな人の話して」
まだ、ニヤついた顔がそこにあった。少しも反省した様子がないのだ。
「全然反省してる感じがないんですけど?というか、力強すぎでしょ」
「いや?反省したよ。それにこんな弱そうな乙女に力が強いは失礼でしょう?」
「事実です」
俺も平均ぐらいの力はあるのにもかかわらず、花園様が力で勝っているのだから事実と言えるだろう。どこからそんな力が出てくるのか分からない。
「まあ、機嫌直してよ。何したら許してくれる?」
「……じゃあ、一緒にコーヒー……飲んでください」
目だけを動かして花園様の顔を伺う。なぜかきょとんとしていた。どうしてそんな顔をしているのか全く分からなかった。
「そんなことでいいの?」
「十分でs…………せっかくならもっと嫌そうなことにしましょうか?」
「さあ、コーヒーを飲もうか。ねっ玄兎」
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