第7話
そして、次の日から花園様に同行するように言われた。きれいな服をもらい、それらを身につけて着いていく。
どこかの村に向かっているようで慌ただしい。
「これはどこに向かっているんですか?」
「少し遠い村だよ。能力持ちが現れたみたいだ」
その情報が花園様に伝わったときにはすでに村の半分が焼けているという情報だった。その能力持ちを捕まえるもしくは始末するために向かうそうだ。
俺は能力持ちだと言われたが自覚は全くないので行っても無駄な気がするが見学でいいと言われた。
意外にもこの世界に歩く以外の移動手段があった。馬車ではあるのだが、俺が元いた町では見られなかったので少し驚いている。思ったよりも揺れが少なく、花園様と向かい合って座っていた。
「あの、質問なんですけど……行くのは俺らだけですか?」
「うん。能力持ちであることをできるだけ周りに知られたくはないからね。家のメイドも知らないから」
確かにあまり知らない方がいいのかもしれない。それだけで危険視する人もいるだろうし、そんなことをほざくやつは異常者だ。
少なくとも、いい目で見られることはないのだろう。俺も周りに言わない方がいいだろうと思い直しながら、花園様の他に話す人なんていないなと思う。
そして、気になっていたことを聞く。
「花園様も能力持ちなんですよね。何の能力なんですか?」
「これから分かると思うよ。それまで秘密」
そう言って微笑む花園様。今、向かっている村で分かるのだろうと思いそれ以上は聞かなかった。
それから二時間ほど馬車に乗り続ける。やがてそこに着いた。鼻を突く色々なものが焼けた匂い。逃げ惑う人の叫び声。真っ赤になっあ空。そこはまさに地獄になっていた。そんな悲惨な光景には目もくれず、花園様は進んでいく。
「玄兎はここで見ていてね」
俺の方に振り返ってそう言うとまっすぐ村の中心に向かう。そして、立ち止まると燃え盛る家から一人の男性が出てきた。その人は火傷を負っていなくて無傷のようだった。その男性は虚ろな目で花園様に話しかけた。
「君は……ここの人か?」
「ああ、この近くに住んでいるものだ。抵抗しなければ命までは取らない。だからこれ以上は……」
そう言った瞬間だった。その男性は花園様に向かって走っていた。それも、人とは思えないほどの速度でほんの一瞬だった。俺はその光景を遠くから見守る。
「全員…………抹消する。それが命令だから」
男性が何か言っているようだが聞こえない。人間離れした速度で花園様の背後に回った男性は能力で炎を放つ。
それは、花園様を覆い火柱がたつ。炎の竜巻のように大きく燃え盛った。目の前のあり得ない光景に驚きながらもその、男に向かって走り出す。花園様を助けるため、男を倒すために走り出した。しかし、驚きは続く。
「なるほどね。こうやって村を焼いたんだね。そして、これは抵抗ととらせてもらうよ」
そう言って火柱の中から無傷の花園様が現れた。思わず足を止める。あの炎の中で生きていられるわけがない。しかし、目の前ではそんな常識が通じないようだ。
「全て……抹消。我らが……」
再び何かを男が話して炎を放とうとする。しかしそれよりも速く花園様が男の顔面に蹴りを入れ沈静化した。その瞬間に村を焼いていた火が消える。
「玄兎~手伝って」
そう言われて花園様のところに向かう。そして縄を渡された。身柄を拘束しろとでも言うのだろう。
目の前では起きたことに思考が追い付かず放心状態が残っているが何とか手を動かす。
「どうしたの?心、ここにあらずって感じだけど」
「……火に包まれたのに何で、生きているんですか?」
思っていることをそのまま口にした。きつめに縄を縛りながら花園様の話を聞く。
「ああ、私の能力が不死身だから」
「え?」
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