第9話

七草 玄兎 視点

 イベント会場を出て静かに二人で歩く。少しだけ他愛のない会話をしながら夜の道を進む。木々が揺れる音が良く聞こえる。


何とかダンスは踊りきることができたと少しだけ安堵する。微かに残る記憶を何とか掘り出しながら回りを見て踊っていたのでちゃんとリードできていたのだろうかと少し不安が残る。


そして、俺はこんな格好をして一日を過ごしたんだ。ちゃんとリードもしてやりたいという気持ちもありつつイタズラをしたくなった。


 花園様を見るとまだ恥ずかしそうにしていた。今日は忘れられない夜にしてやろう。そんな笑みが漏れる。もう十分間も歩けば花園様の屋敷に着くだろう。そろそろ頃合いだ。

 花園様よりも一歩だけど前に出て彼女の手を取った。

「えっ玄兎?」

驚いた花園様の声が聞こえる。それを無視して言った



「もう少しだけ続きを踊りませんか?」


そう言うと同時、俺は彼女の手をしっかりと掴んでくるくると踊る。彼女もなにも言わずに付き合ってくれる。ここからがイタズラの仕返しだ。

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