第7話

七草 玄兎 視点

 イベント会場で沢山のお菓子をもらった。見たことがないものも沢山あってとても楽しい。しかし、一つだけ問題があった。花園様のことだ。仮装のせいか、メイクのせいか笑顔がまぶしい。この会場内を俺の手を引いて歩いてくれる。


その華奢な小さな手で俺を引っ張っていく。誰かに手を引かれるなんて経験がなく何だか不思議な感覚だった。

 騒がしい回りの音がどこか遠くで聞こえていて俺たち二人の世界のようだった。この瞬間がとても楽しくてずっと続けばいいのにと思ってしまう。そんなことを考えているときにとある看板が目に入る。

「この後、夕方四時から広場でダンス会場」

どうやら広場の方でダンスをするイベントがあるらしいのだ。その情報を知ったときとある花園様の言葉を思い出した。

「やっぱり、女の子としては一途で、前を歩いてくれるような安心と優しさがあるような人がいいからね」

昔、そんなことを言っていた。俺が優しいと花園様の目に写っているかは分からないが前を歩くぐらいは出きるかもしれない。


もらったお菓子に夢中なフリをして誤魔化しているが花園様を直視できていないのだ。どうしてだか分からないが今日は一段と可愛らしい笑顔を向けてくる。そんな顔をされたら俺も顔に出てしまう。


でもまだこの気持ちに正直になるわけにはいかないのだ。俺にはやらないといけないことがある。でも今日だけは少しだけ花園様と笑いたい。

 だから、俺はとある作戦を考えて実行する決意をした。

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