ハロウィン会場にて

第6話

そんな会話をしながら歩いて街に向かう。少しだけ歩くと楽しげで愉快な音楽や声が聞こえてきた。その音につられるようにして私たちの足も早くなっていった。そして、その楽しげな雰囲気に圧倒される。

 それぞれが着飾った洋服を身につけて広場の中心で踊っている。お菓子の甘い匂いや楽しい音楽がこの場を包んでいた。玄兎の方を見ると少し驚いているようだったが楽しそうでもあった。散々、仮装について文句を言っていたが今は楽しさが勝っているようだ。

「あっ玄兎、あそこでお菓子を配ってるよ」

そう言って玄兎の手を引く。今日は玄兎にドキッとさせるのだ。できる限りの笑顔で笑う。本当は玄兎にリードして欲しいけど今だけは私がしてあげる。


その代わり、今後は玄兎にリードしてもらおうと自分を納得させる。だから、今日だけは全力で玄兎を落とす。

「かわいい、お嬢さん。マシュマロはいかがですか」

そう言って魔女の帽子を被った女の人がマシュマロをくれる。

「ありがとうございます」

「……ありがとうございます」

可愛いと言われた琴似複雑な表情を見せる玄兎。しかし、見たことがないだろうマシュマロに興味があるようだ。

「これはマシュマロというお菓子だよ。食べてみな」

そう言って私も食べる。このふわふわした食感に甘ったるい味がとても美味しい。この甘さが私の幸せだ。甘いものがわりと好きである玄兎はどのような反応をしているのだろうと視線を移す。そこには、マシュマロに感動して硬直してときめいている玄兎がいた、その顔を私にして欲しいものだ。

「マシュマロ、好き?」

「……はい」

まだ感動しているようだ。

「ココアという飲み物に浮かべるのもオススメだよ。今度作ってあげるね」

「いいんですか!」

こんな反応が見られるから飽きないのだ。こんなことで玄兎の笑顔が見られるのならいくらでも作る。本当に甘いものが好きなようだ。それならばこのイベントは玄兎にとってとても楽しいものになるだろう。


 その後も沢山のお菓子を貰う。マシュマロも飴も沢山貰えた。他にもクッキーやチョコレートなど多くのお菓子で両手が埋まる。玄兎も仮装のことを忘れてはしゃいでいた。


 そして、ここからが本番だ。広場の中心で二人ペアで踊るのだ。もちろん玄兎と踊るつもりだ。そう心の中で再確認してお菓子を食べている玄兎に話しかけるのだった。

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