第3話:俺の部屋に紅子ちゃん。

大翔は帰る電車の時間に余裕があったからチョウピラコって座敷わらしの

ことを調べてみた。

そしたらチョウピラコは座敷童子の一種で 座敷童子にもいくつか種類があり、

その中でも奥座敷にいる色の白い最も綺麗な座敷童子を「チョウピラコ」と

言うんだってことが分かった。

まあ、紅子ちゃんは可愛いし妖怪っぽくはない。


「しかたない俺のマンションに紅子ちゃんを連れて帰る、それでいいだろ?」


彼女は両手を頭の上にあげて丸を作った。


紅子ちゃんを連れて古民家を出てバスに乗って最寄りの駅へ向かった。

紅子ちゃんがお腹が空いたって言うもんだから駅弁を二個買ってふたりで

ホームのベンチに腰掛けて仲良く食べた。

紅子ちゃんは嬉しそうに俺の顔をのぞきこんで、そして笑った。

すでに俺の彼女してるし・・・。


言葉には出さなかったけど、その顔が、まじで、まじこで可愛かった。

この子が人間ならってつい下心を出してしまった。


俺の服を着た紅子ちゃん、たぶん電車に乗ってる客は彼女が座敷わらし

だって誰も気づかないだろうな。

あの臭い着物じゃなくてよかったよ。


そんな訳で、大翔ひろとと紅子ちゃんは岩手県を後にした。

で、ガタゴト揺られて大翔のマンションの最寄の駅に電車は到着した。


駅を出るとすぐに大翔のマンションが見えた。


「ほら、あれ・・・あのレンガ壁の建物が俺の住んでるマンション」


大翔は紅子ちゃんを、とうとうマンションの自分の部屋に連れ込む・・・

ってのは聞こえが悪いからご招待することにした。


「今から俺の部屋まで、こいつで上がるからね・・・」


大翔の部屋は5階の西の端っこ。

我が部屋に行くために大翔はエレベーターのボタンを押した。

しばらく待ってるとエレベータがやってきて扉が開いたので大翔は

紅子ちゃんに


「はい、入って」


ってうながした。


「え?なに、なにこれ?こんな狭っこい中に私を乗せてどこに連れてくつもり?」


「俺の部屋だよ、紅子ちゃん・・・」

「あのね、俺の部屋に行くためにはこれに乗らなきゃいけないの」

「これはエレベーターって言ってこの箱に乗ってブイ〜って上に登って

くんだよ、分かった?」


古い屋敷にずっといたからエレベーターなんか知らない紅子ちゃん。

おそらく見るモノ聞くモノ、目から鱗だろう。


「外の世界に出たのはもうずいぶん昔、それ以来ど田舎から出てないのね、私」


「いいから、乗るよ」


そう言って大翔は紅子ちゃんの手を掴んでエレベーターに乗った。

知らない箱に乗せられて紅子ちゃんはちょっとビビってたかな。


エレベーターを降りて彼女を連れて大翔は自分の部屋へ。


今まで大翔の部屋に入った女性は母親と大学時代の同級生。

それに女神様の小玉ちゃん。

お世話になってる雑誌社にもこれって子がいないから部屋に入れたのは

ごくわずか。


大翔は酒が飲めないから飲み会もキャバクラなんかも行ったことがないから

玄人の子でも女っ気もまるっきりない。


酒が飲めないってのは、酒なんか飲んだら動悸が激しくなって宴会に参加

できないままその場で寝てしまうからだ。

つまんないから自然と酒は飲まなくなった。


そういうこともあって大翔の周りには女性どころか建前上付き合ってる男も

女もいない、知り合いといえば、お世話になってる編集者や出版社の人たちくらい。

仕事は常に一人が多いから、なおさらだった。


今のところ、もっぱら仕事「伝説を求めての旅」が生き甲斐ってところだろう。

伝説に埋もれた田舎に夢をはせて物語を散策する浪漫溢れる旅が好きだった。


妖怪に好かれる、妖怪を引き寄せるのは大翔自体、妖怪が好きだったからだろう。

実際そう言うものかもしれない。


「はい、部屋に到着・・・入って紅子ちゃん」


「あの・・・入っていいの?」


「なに遠慮してるの・・・俺の彼女なんだろ・・・入って」


「あ〜そっか私、ヒロト君の彼女だった・・・忘れてた・・・」


「なに?、忘てたって?くっついて来といてなにボケかましてんの」

「あ、ダメ、ダメ、ダメ、土足厳禁・・・って、あ、ごめん下駄のまま

だったね」

「さすがに靴は二足は持って行ったなかったからな」


「そこにスリッパあるだろ、それ履いて」


「ほいほい・・・」


紅子ちゃんを見てるとなんかいけない気分になりそうだった。

たしかに座敷わらしなんだけど、そうだって意識しないとまじで普通の女の子

にしか見えない、まして今の紅子ちゃんは着物じゃなく俺の服着てるから・・・。


つづく。



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