第20話 神々の力
師匠の頼みを手伝うという方向性で纏まり。詳しい話は家でご飯を食べながらするということになり、文化祭が終わった後に家に集まった。
もちろんだが、昔から俺と日向と関わりのある果林姉は師匠のことを知っているし、師匠とも友達でもある。
でも、まさか果林姉も師匠が神だとは知らなかったようで驚いていたが、そのことに関しては全く気にはしていなかったので、逆に師匠の方が驚いていた。
「急な訪問に加え、飯まで頂いてすまんのぉ」
「いや、私は一向に構わないよ。それに、久しぶりに貴方と会えてとても嬉しいよ」
「儂も、果林と会えて嬉しいぞ。それにしても、刀命とお主が婚約者とはなぁ!めでたいことじゃ!!」
「ふふっ、ありがとう」
昔から、この2人は姉妹みたいに仲が良かったからな。
9人で談笑しながら食卓を囲って、しばらくして、皆が食べ終わった頃に、師匠が話を切り出す。
「改めてだが、儂の無茶な頼みを聞いてくれて感謝する」
頭を下げる師匠だが、皆が顔を上げてくれと言うので顔を上げた。
「それで、師匠の頼みの具体的な内容を聞いてもいいか?こっちの世界まで被害が出るのは聞いたが、何があってそうなるんだ」
俺が代表して問いかける。
「うむ、少し長くなるが話すとしよう」
そして、それから語られた内容は、かなり衝撃的なものだった。
曰く、ダンジョンはこの世界と異世界と衝突し、一部混ざり合った影響で生まれたものとのこと。
曰く、《試された大地》の最深部は異世界と繋がっているとのこと。
曰く、世界同士の衝突の影響で黄泉ノ国と現世の境界線が崩れかけているとのこと。
曰く、黄泉ノ国に流れ込んだ魔力を吸収し妖魔共が、かなり強力な力を得て暴れ回っているとのこと。
曰く、師匠は2つの世界の混ざり合ったところや衝突した影響で崩壊したところの修復を異世界の神と協力して行っているため動けないとのこと。
曰く、その協力している異世界の黄泉ノ国、冥界の神に何かあったらしく、色々なものが抑えきれなくなってしまったとのこと。
「なので、刀命達には黄泉ノ国に来てもらい妖魔の駆逐と儂の補助をしてもらいたいのじゃ」
師匠の話を聞いて、『この世界は50年前にどこかの世界と繋がった。その影響でダンジョンが生まれたのではないのか』と思っていたのが確信へ至った。
てか、
「普通に、やべぇじゃん」
「うむ。やべぇから、お主らに協力を仰いだのじゃ」
俺が頭を抱えている中で、日向が白目を向いていた。
現実を受け入れたくなくて、自ら気絶したようだ...
「でもさぁ、菊理って刀命達の師匠なんでしょ?刀命と日向が手伝うのは分かるけど、アタシ達は足手まといなだけじゃない?」
その言葉に頷く師匠。それを見て星火が何かを言う前に、師匠が言う。
「じゃが、暴れ回っておる妖魔共の数を減らす事くらいなら出来るのじゃ。儂の配下達や他の十王連中が対処に当たっているが、如何せん数が多くて叶わん。それに、ぶっちゃけて言うと配下達よりも、お主らの方が強いからな」
その答えに納得した星火は頷いて、修行の成果が試せると気合いが入っている。
海、よっちゃん、リアも同じような感じだ。
でもなぁ、妖魔の中にも神格を得る一歩手前のやつとかいるから心配だな。
そう思っていると、師匠がこっちを見て薄ら笑を浮かべる。
可哀想に...師匠はアレをするつもりだな。
「刀命よ。準備せい」
その言葉を聞くと同時に、日向を叩き起して言う。
「星火達にアレするぞ」
復活した日向は、言われた内容をすぐに理解し、師匠の方を一度見て頷き返される。
そして、星火達に向き直り合掌をする。
「よし、ではやるのじゃ!気合い入れるのじゃぞ!!」
その言葉と同時に、俺達は力を解き放つ。
俺と日向は、髪が白髪に、瞳が金色に変化する。
そして、俺の手には、超高濃度の蒼い何かが集まり揺らいでいる。
日向には、体から神力とは別の膨大な量の
師匠は、どす黒い禍々しい死のオーラを纏い、瞳が真っ黒から、俺と日向が霞むほどの神々しさを放つ白銀のものへと変わった。そして、その手には金色の糸が巻き付いた糸巻き棒を持っている。
そして、俺達は同時に声を上げる。
『秩序掌握』
『
『
日向が詠唱と掌印を開始する。
いきなりの行動に、他6人が驚いている(アナさんだけ慌てて動画を取り始めている)が反応する余裕なんてあるが...無いことにしておく。
「え...?刀命君?何するの?」
「...」
「ねぇ!僕達、これから一体何されるの!?」
対象になっている4人がギャーギャー騒いでいる...いや、よっちゃんはいつも通りだな。だけど、無視だ、無視。
日向の詠唱と掌印が終わる。
『天地開闢・偽』
日向が、そう唱えた瞬間、目の前がが真っ白な空間に変わる。
今は、日向が亜空間に創造した無の世界の中にいる状態だ。
それに合わせ、手を眼前に掲げて虚空を...世界を掴む。
『世界改変』
この世界に干渉する。この無の世界は、現実世界と理が同じなので、それを鍛錬に適したものへと改変していく。
だが、このままだと、この世界は、理を改変した際の負荷に耐えきれずに崩壊する。
なので、仕上げに師匠が1本の金色の糸を手に取り断ち切る。
『絶縁』
俺達の世界との縁を全て断ち、この世界を新しく独立した完全な世界へと昇華する。
そして、3人の声が揃う。
『『『三神の箱庭』』』
その瞬間、世界に色が生まれる。
空には太陽が浮かび、朝露に濡れた草原を照らし、心地よい風が吹き、川のせせらぎまで聞こえてくる。
「ははっ...私は、一体何を見ているんだ?」
「嘘でしょ...」
「僕...おかしくなったの...?」
「ん...!」
「すごい...すごい、スゴいですッ!!」
「これが...神の力...ですか...」
アナさんは、こんな状況でも、まだ動画を撮る余裕があるみたいだ。
師匠が言う。
「この世界が、儂ら3人の全力じゃ。そして、この世界の1年は、現実世界での1時間相当じゃ」
そこまで言って、ニヤリと笑う。
「お主らは、妖魔共と戦えわするが、何かしら黄泉ノ国でイレギュラーが起こった場合、死ぬ確率が高いのでな。現実が丑三つ時になるまで、今から約7年間みっちり修行してもらうぞ」
その言葉を受け、絶望の表情になる星火、海、よっちゃん、リアの4人。
まぁ、俺が飯の時に「師匠の修行は死ぬ方がマシだった」と言ったからな。
「まぁ、安心するが良い。この世界は、疲れもしなければ、腹も減らない、睡眠だってもちろん要らないのじゃ。
そして、何より...無茶しても死ぬことが無いのじゃ」
そんな中、「頑張れ!4人とも!!」と思い。俺と日向は果林姉とアナさんを連れて現実に戻ろうとしたら、師匠が言った。
「あぁ、刀命、日向よ。お主らにも久々に修行を付けてやるから果林とアナを帰したら戻ってくるのじゃぞ?
無論、儂からは逃げられぬことは知っておろう?」
師匠が強烈な圧を放ちながら言ってくる。
あっ...終わった...
日向を見ると、絶望したのか真っ白になっている。
果林姉とアナさんを送って、転移で戻ろうとするもアナさんから呼び止められる。
「刀命様、今の出来事を撮っていたので、刀命様のチャンネルにてアップしてもよろしいでしょうか?」
と聞かれたので、「構わない」と答える。
すると、果林姉の手を取って嬉しそうにPCのある作業部屋に駆けてい行く。(ちょっと前から、果林姉とアナさんには、俺のチャンネルの管理を任せている)
「お兄ちゃん。あっちじゃ、死ぬことは無いじゃん?なら...昔より過酷になるってことだよね?」
死んだ魚の目をした日向が聞いてくる。
「妹よ。何も考えるな。ここまで来たら、流れに身を任せるだけだ。ハハッ...」
そう答えて、俺達2人は地獄よりも恐ろしい場所へと転移した。
そして、最初に目に飛び込んできた光景は、地に倒れ伏している4人と、その真ん中で高笑いをしている師匠の姿であった...
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