第17話 姉?襲来


 今日は一日中文化祭の準備の日だ。

 そして、俺達兄妹の姉的存在の『甘屋あまや 果林かりん』姉が来る日でもある。


「刀命君、なんか気合い入ってない?」


 海が不思議そうにしているが、気合いが入るのは当然だ。


「何せ、尊敬している人が来るんだからな」


 すると、星火が驚いた顔になる。


「アンタが尊敬する人とか一体どんな人なのよ?気になるわね...」


 会話を聞いていたクラスメイト達の顔も緊張して強ばり始める。


「来たな...」


 そう言って立ち上がり、調理室のドアを開けると、果林姉がドアの前にいて目が合った。


「お久しぶりです。果林姉」


 そう言って、部屋の中に招き入れると皆が息を飲む。


 それも仕方の無いことだ。


 太もも辺りまで伸ばされた艶やかな黒髪に凛々しい顔、170cm近くある長身にモデルも裸足で逃げ出す程の出るとこは出て引っ込むところは引っ込んでる抜群のプロポーションを持ったクール系の美女がやってきたのだから。


「あぁ、久しぶりだな刀命。でも、前みたいにもっとフランクに接してくれないか?」


 そう言って、微笑みを浮かべて抱きしめてくる。


「挨拶くらいはいいでしょ?」


 俺も果林姉に腕を回し再会のハグをしばらく堪能した後で振り返り皆に紹介をする。


「皆、紹介するよ。今日、菓子作りを教えてくれる果林姉だ」


「うむ、紹介に預かった甘屋 果林だ。刀命は私の弟みたいな存在でな。小さい頃から私の背中を追っかけてくる可愛いやつだ。それと、私の将来の夫になる予定だ」


 恥ずかしいことを暴露しながら、俺の方を見てニヤッと笑う。


「ちょっと、果林姉。からかうのはやめてくれ」


「ん?なんだ、私が嫁入りするのは不満か?」


 恥ずかしくなってきたので、果林姉から顔を背ける。


「おっ?否定しない辺り満更でもないみたいだな」


 当たり前だ。果林姉と結婚したら幸せに決まってる。


 これ以上からかわれるのはマズいと思ったので両手を挙げる。


「もう、降参だ」


「くくっ、まぁいい。私と刀命が結婚するのは決まってることだしな」


瞬間、クラスメイト達がザワッとする。


 そうなのだ、ガキの頃、両家の家族の前で果林姉にプロポーズをしたのを見た大人達がノリノリで婚約を決めたのだ。


 日向も「果林お義姉ちゃん」と呼んでいる。


 ちなみに、日本はダンジョンが現れてからAランク以上の探索者に限り一夫多妻もしくは一妻多夫が認められたのだ。


 そして、果林姉が最後にはなった発言により教室は阿鼻叫喚の地獄絵図。


 男共は、親の仇を見るような目で俺を見てくる。

 女子達は、キャーキャーと黄色い声を上げる。


 そして、何故か星火達3人は能面のような表情で見てくる。


 圧が凄い...普通にチビりそう...


「「「ちょっと来て」」」


「あい...」


 部屋の隅に呼ばれ、正座して、どういうことなのか説明をしている中で果林姉が着々とクラスメイト達に作り方を教えている。


 そうしていると、果林姉がこっちに向かって大きな声で話しかけてくる。


「そういえば、私も刀命達の家に住むことになったから、よろしく頼んだぞ?」


「「「「...は?」」」」


 俺達が揃って間抜けな声を上げると、悪戯が成功した子供のような表情で笑う。


 その表情に見蕩れていると、3人から頬を引っ張られる。


 3人の尋問から解放さると、クラスメイト達も一旦休憩時間に入る。


 そうなると、来るわくるわ質問の嵐。特に女子達から...やれ、馴れ初めが聞きたいだの、婚約に至るまでの経緯だの、同棲をするのかだの。

 俺が無難に答えるが、果林姉が火に油を注ぐかのように答え直すので、3人からの視線が質問の度に鋭くなっていく感じがするのは気のせいではないだろう。


 そして、最後にまたしても果林姉は、特大の爆弾を置いていったのだ。


「まぁ、私は刀命がハーレムを作ろうと構わないがな」


 そう言って、3人を見て意味深に色っぽく笑う果林姉の笑みを見て、ゾクゾクしたのは秘密だ。


 ちなみに、それを見た3人は果林姉のことを救世主でも見るかのような目で見ていたと言っておく。

 


 その後、果林姉は3人とめちゃくちゃ仲良くなっており、仲良く固まってコソコソと何かを話していた。




 あっ、なんか凄い背筋がゾワッとしたな...



 振り返ると、4人がこっちを見ていた。怖かったので目を逸らした。


「頑張って!夜月君!」と女子達からは励まされたが、何を頑張れというのか?よく分からんが、「うん」と答えておいた。

 相変わらず、男共は鬼の形相でこっちを見ているが俺が何をしたって言うんだ...




 それでも、つつがなく果林姉による菓子作り講習は終わったのだった。


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