第10話 SSランク

「あぁ、いつも配信を妹と一緒に見させてもらっている」


 その言葉に、三人は複雑な表情を浮かべる。


「でも、僕達はもう配信が出来ないよ...この体じゃ探索者なんて出来るわけないよ...」


 その言葉に思わず笑ってしまう。俺のその反応に星火さんが怒ったのか、涙を浮かべながら俺の胸倉を掴み叫ぶ。


「何、笑ってんのよ!アタシ達だって、アタシ達だってねぇ!」


「星火さん、貴女は左足を失っていましたよね?」


 まだ、俺に何か言おうとしていたが、それを遮って問いかける?


「あれ...なんで?私、立てるの?」


 意味が分からないと言った顔で、失ったはずの左足を凝視している。


「僕の右腕も元に戻ってる...」


「ん、私も手が生えてる。貴方が治したの?」


 三人はまるで今気づいたかのような反応だ。実際、俺に言われて気付いたのだろう。


「夜奈さんの質問への答えはYESだ」


「...有り得ない!一体貴方、私達に何をしたの?」


 めっちゃ失礼な事をされているはずなのに、星火さんにされていると不思議と不快感が湧いてこない。まぁ、通常時の性格を知っているしね。今も、仲間の事を案じて、俺に問い質しているのだろう。


「ん、星火。失礼」


 夜奈さんがそう言って窘めるが、夜奈さんも俺の事を測りかねているらしい。


「あっ...」


「ん、どうしたの?」


 海さんが何かに気付いたようだ。


「もしかして、魔法を使えたりするの?」


 俺の目を見て聞いてくる。その問いかけに、なるほどと納得する。やっぱり気が動転していて、出現した魔法陣に気付いていなかったらしい。


「正解」


 端的にそう答える。その答えに三人共絶句している。


「うそ...」


 星火さんの呆然としている。この発言も思わず口をついて出ただけだろう。


「ん、見せて。」


 夜奈さんは魔法を実際に見せてみろということらしい。それだけで疑惑が晴れるならお安い御用だ。


「何か見てみたい魔法はありますか?」


「僕、転移魔法見てみたいかも。」


「いいですよ。」


 指を鳴らす。すると足下に魔法陣が浮かび上がる。


「すごいわ!本物の魔法陣よ!」


「僕、生で見るの初めて...」


「ん!」


 三者三様の反応で面白いな。


「よし、跳ぶぞ。」


 言葉と共に視界が白く塗りつぶされる。転移魔法の特徴だ。


「終わったぞ。」


 目をギュッと瞑っている三人に声をかける。


「ここは?どこかしら?ダンジョン内らしいけど...」


「分かんない」



 夜奈さんが自分達の背後を指さして言う。


「ん、出口」


 二人がバッと振り向き絶句する。


「どうだ?これで信用してくれそうか?」


 三人に問いかけると?こちらを向き頭を下げて謝ってくるが、


「頭を上げてくれ」


 その言葉に頭を上げるも、どこか申し訳なさそうな顔をしている。


「気にする必要はないぞ。そういった反応には慣れているからな」


 俺の言葉に顔をしかめる三人を見て、ミスったなと思う。そんな事言われたら、そうなるよな。なので一応フォローを入れておく。


「一応言っておくが、三人の反応は正しいものだ。何者かに分からない奴に助けられた時は疑うのがダンジョン内では正解の行動だから。それに。俺のこの格好なら尚更だ。だから気にしてくてもいいよ」


 卵みたいな仮面で顔を覆っていて、唯一目の所だけ穴が空いてる格好の奴なんて怪しさしかないしな。


「だけど...」


 それでも、食い下がる海さんに一言。


「本当に気にしなくていいよ。俺だって同じ反応するし」


 そう言って納得してもらう。


 そうすると、星火さんから胸倉を掴んだことに対する謝罪される。


「あの、先程は貴方に私の勘違いにより乱暴を働いてしまい申し訳ございませんでした。」


「いや!俺が笑わずに、ちゃんと説明していたら、そうはならなかったから本当に気にしないで下さい。謝るべきはこちらです。本当にすみません。」


 俺が頭を下げると、星火さんが慌てているのが分かる。


「ん、星火。少しからかわれてる」


「え?」


 素っ頓狂な声が面白くて笑いを堪えていると、それに気付いたのか大きな声で罵られる。


「馬鹿ッ!!」


 顔を真っ赤になっているのを隠しながらなので、全然怖くない。むしろ可愛いまである。そんな星火さんを見て、思わず声を上げて笑ってしまう。


「ククッ、アハハハハハッ!」


「もうっ!笑わないでよっ!!」


 照れ隠しでペチペチ叩いてくる。


 その光景を見て。海さんが驚いた様に呟く。


「星火が男の人に懐いてる...」


 それに、夜奈さんが同意する。


「ん、珍しい」


 すると、星火さんは、ペチペチしてくるのをやめて二人を睨む。残念だ。


「そういえば、僕達自己紹介してないね。」


「そうね。一応しておく?」


「ん、賛成」


 俺も頷く。


「俺は、一応月夜と名乗っている。もちろん本名では無い。活動名とでも思っておいてくれ。そして、これが探索者カードだ。」


 そう言って、三人にだけ見える様に探索者カードを出す。


「は!?」


「え!?」


「ん!?」


 1拍おいて、今日イチの反応がダンジョン内に響き渡る


「「SSランク探索者ぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」








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