第5話 恐れるもの
視界が開けた瞬間襲ってきた浮遊感。目の前に広がるのは無限に続く空。そして、襲いかかって来る数多の上位竜達。1匹1匹がAランクダンジョンのボス程度の強さを有している。
「相変わらず、えげつないねぇ」
落下中で身動きがまともに取れない中で四方八方から竜共の大群。魔術で飛べたとしても、この数捌くのは、ほぼ無理だろうな。
目の前に竜の顎が迫る。
ria:`月夜様!´
riaさんの焦ったかのようなコメントが流れてくるが、
「月夜様って」
様付けとは、思わず苦笑してしまう。
「でも、まぁ大丈夫だから」
腰に下げていた刀を抜き放ち横一文字に一閃
「
昔の天と言うのは、今で言うところの神と近い考えだ。要するにこの技は、神をも断つ一撃である。
そんな一撃をたかが竜ごときが受ければどうなるか?
目の前にその答えがある。刀を振るった所に竜はおろか空すら消滅している。
ria:`嘘...´
「ククッ」
riaさんのコメントを見て思わず笑ってしまった。
「riaさん、この光景を視てどう思います?」
憶測でしかないが、riaさんは特別な眼を持っている。この光景も正確に理解しているだろう。
ドローンカメラに目を向ける。いや、カメラの先と言った方がいいか。
ria:`こんなデタラメな様な攻撃を魔力も使わずに、かつタメも無しに...さらに、放った後に隙が無いから、すぐ次に繋げることが出来る。この規模の技を使って疲れもしない。月夜様、貴方は...一体何者なのですか?´
「よく視えてますね。その通りです。この程度なら何日放ち続けようが疲れませんよ。」
多分riaさんは、俺が全て本当のことを言っていることを見抜いているだろう。
反応が無い。
もしかしたら、恐れられているかもしれない。そう考えると少し、ほんの少しだけ寂しくなる。
ria:`凄い!凄いです!これだけの力を技を手に入れるのに一体どれほどの鍛錬を詰んだのか全く想像できません。私もそれなりに強いという自負がありましたが、それは!ただの驕りした!あぁ!自分が恥ずかしくて堪りません!私にとって!今日!この出会いは私の人生の中で一番大切なものと成りました!´
あぁ、riaさんは俺を恐るどころか、俺の力を見て、その力に技に敬意を持ってくれた。俺の事を認めてくれた。
それが...堪らなく嬉しい!
今まで力を抑えて過ごしてきた。家族の前以外では、その一端さえも見せたことは無かった。友達にさえ見せたことはおろか話したことさえ無かった。怖かったから、強大すぎる力を持つ俺を恐れられるのが。じいちゃんに「配信をやらないか?」と言われた時、俺を認めてくれる人がいるかもしれないと期待した。元々、仮面なんて付けるつもりは無かった。顔も名前も公開して、ありのままの俺を視てくれる人が、きっといるはずだと思い配信をすることにした。
でも、配信前日になって怖くなった。友達に見られたら、関係が終わるのではないかと。信じたかった。でも、出来なかった。あの時の顔が、声が脳裏に浮かんでしまった。だから結局、仮面を付け月夜と名乗った。月夜なら、見る人が見れば俺だと気付くかもしれない、気付いて欲しくて、この名前で活動することにした。
でも、そんな想いをriaさんがぶっ壊してくれた。今も視られているのが分かる。あの時の様な視線じゃない。ただ、純粋に無邪気に好意的に、なんの恐怖も打算も無しに俺を視ているのが痛いほどに伝わってくる。
「ありがとう。俺を視てくれて、俺を怖がらないでくれて。riaさん、君が初めてだ。」
万感の意を込めて伝える。
じいちゃん、ありがとな。配信を勧めてくれて。そのお陰で、素晴らしい人と出会えた。
「もう...仮面は要らないな。」
顔を風が撫でる感触がする。
「改めて名乗ろう。」
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