第2話

ある日の午後、穏やかな日差しが街を包んでいた。しかし、幸の目には、遠く離れた山中の森に異様な光が放たれているのが見えた。それは通常の自然現象とは明らかに異なる不気味な輝きだった。


「またか…今度は山か」


幸はすぐに仲間たちに連絡を取り、状況を説明した。




力男は幸の連絡に少し緊張しつつも、すぐに応答した。山に潜む異変について聞かされると、臆病な彼はすぐに身を縮めたくなる衝動に駆られた。しかし、自分もチームの一員であり、役に立ちたいという思いが彼を支えていた。


「よし…俺も行ってみるよ。でも少し怖いな…」


彼は遠くから自分の腕を使って周辺の様子を探ることにした。




勇気も同じく幸の連絡を受け、すぐに耳をすませた。彼の聴覚は山中の微細な音さえも捉えることができる。遠くの木々が揺れる音、風に乗って流れてくる動物の声、そしてかすかに響く不気味な音…。それは人間の声ではなく、何か自然界のものとも違う低いうなり声だった。


「何かがいるな…どうやらただの動物の騒ぎではなさそうだ」


勇気は警戒心を抱きながら、仲間にこの音について知らせた。




静六は、仲間たちの会話をじっと聞きながら、彼らの不安を和らげるように落ち着いた声を送った。


「みんな、慎重に。焦らず、一つ一つ確かめよう」


彼の言葉が遠く離れた仲間たちに届くと、自然と緊張がほぐれていく。彼の穏やかな声が、どこかしら安心感を与えてくれるのだった。




束はこの異変を聞くと、すぐに行動に移した。彼女の長い脚を生かして、街から山へと迅速に移動を開始した。地面を蹴り上げるごとに、風を切りながら彼女のスピードは増し、まるで人間とは思えないような速さで山へと向かっていた。


「待ってて!すぐに確認するから!」




終は異変のある場所についての詳細を探るため、地図や資料を調べ始めた。山中にはかつて、古い寺院や遺跡があり、その場所は「霊場」として地元の伝承にも残されている場所だった。


「ここに何か封印されていたか、あるいはこの地には特別な力が眠っているのかもしれない…」


終はメモを取りながら、仲間にその情報を共有した。




ニノは、「闇の封印…!まさにこの目で確かめねばならぬ!」と意気込んでいた。彼女は自らの長い舌を使って、山の異変を遠隔で調べようと集中し始めた。その姿はどこか不気味で、けれども彼女の中二病的な言動が、仲間たちに不思議な安心感も与えていた。




大美は心配そうな顔で画面を見つめていた。彼女は常に最悪の事態を考えてしまうため、今回も「何か大変なことが起こるんじゃないか」と怯えていた。


「やっぱり…あそこは近づかないほうがいいのかも…」


彼女の不安は、逆に周囲の仲間たちに慎重さを促してくれる。




やがて束が山の麓に到着した。そこにはかつて栄えた古い寺院の跡地があり、廃墟となった建物の一部が山に埋もれるように残っていた。その場所の中心には、不自然にぽっかりと開いた穴があり、そこから異様な光が放たれていた。


「ここから出てるのか…」


束はすぐに調査を始めたが、その時、突然背後から何かが動く気配を感じた。


「誰か…?」


彼女が振り返った瞬間、闇のような何かが形を成し、彼女に襲いかかろうとした。だが、そこへ犬鳴力男の腕が伸び、束の前に立ちはだかるようにその影を押しのけた。


「危ない…!」


力男は震えながらも、勇気を振り絞って束を守った。彼の臆病さが嘘のように、その腕はしっかりと影を抑え込んでいた。




次の瞬間、美耳勇気が音を辿り、その影の正体がかすかに何かを呟いていることに気づいた。その声は低く、かすかに「帰れ…帰れ…」と響いていた。


「どうやら、ここに入ってはいけないと主張しているようだが…」


勇気の報告に、南静六が穏やかな声で呼びかける。


「それでも調査は続けないといけない。この土地に何が潜んでいるのか、正体を突き止めよう」




ニノは、闇の気配に自分も近づき、厨二病的な決意に燃えていた。


「フッ、この影を封印するのは我が使命…!その暗黒の力を暴いてやる!」


そう言いながら、彼女は長い舌で影の一部を掴むと、それが徐々に消え始めるのを感じた。




布野大美も、影を見て不安を抱えながらもその場に立っていた。最悪の事態を想像しつつも、仲間たちが勇敢に立ち向かう姿を見て、少しずつ恐怖が薄れていった。


「きっと…大丈夫よね…みんながいるから」


大美の言葉は、仲間たちの心に優しく響き、彼らを一層強くした。




最後には、仲間たちの連携によって影は完全に消滅し、山の光も静かに消えた。彼らの遠隔協力は、どんな距離でも支え合う力を持っていた。




帰り道で、束が仲間に笑顔で感謝を伝える。


「みんな、ありがとう。やっぱり私たちのチームは最高だね!」


幸はその笑顔に頷きながら、「これからもよろしくな」と心の中で誓った。




こうして、また一つの危機が回避された。八人の絆はさらに深まり、日本中を見守る彼らの旅は続いていくのだった。

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