第1話
夜の闇に包まれた静かな村。遠く離れた東京のビルから、その村の様子を見ている目沼幸は、眉をひそめていた。村の神社の周囲には、不気味な黒い影が渦巻いているのが彼の目にははっきりと見えていたのだ。人々には見えないはずのその影が、夜になると神社の周囲に集まり、何か不穏な気配を漂わせている。
「ここで何が起こっているんだ…」
幸はすぐに全国の仲間たちに連絡を取った。
犬鳴力男のスマートフォンが震えた。メッセージを確認すると、再びあの黒い影についての報告がされていることに気づく。
「またか…」
彼は臆病な性格のため、このような状況に出くわすたびに不安を感じるが、幸が自分を頼ってくれていることを思い出し、自分を奮い立たせた。
「幸が俺を頼ってくれてる…今回は俺の腕で何か役に立てるかも…!」
美耳勇気は遠くで行動する仲間たちの声や、現地の音の変化を聞き取りながら冷静に状況を把握しようとしていた。風の音や木々の揺れる音と一緒に、わずかに耳に届くのは、不気味な低いうなり声。神社の奥から何かが迫っている気配がある。
「どうやら何かがいるな…。気を引き締めよう」
勇気は仲間に伝えながら、早速彼の優れた聴覚で周囲を探り始める。
南静六は、遠くにいる仲間たちに的確な情報を届けるため、自分の声を神社の方向へ飛ばした。
「幸、そちらはどんな様子だ?」
彼の声は静かで落ち着いており、遠くの仲間たちに安心感を与える。彼が遠方から声を届けてくれることで、仲間たちはどこか心が落ち着くのだった。
朝火奈 束はメッセージを確認すると、すぐに村に向かう準備を整えた。彼女の長い脚は、このような緊急事態にはもってこいだった。神社へ向かって飛び出し、彼女は全速力で村へ向かう。
「待ってて!私がすぐに行くから!」
その勇敢な姿と行動力で、彼女は仲間からの信頼を一身に背負っていた。
朝比奈 終は、画面の地図や村の資料を整理し、事件の背景を探りながら、何か異変の手掛かりがないかを冷静に調べていた。静かに思考を巡らせる彼女の手は、まるでその場にいるかのように器用に動き、神社の歴史や噂を読み解いていく。
霜野ニノは、幸からのメッセージに高揚し、「闇の気配だ…!この闇を調査するのは私の務め…」と、独り言をつぶやいていた。彼女は自身の舌を伸ばし、遠隔で気配を探る準備をしている。
「やはり何かしらの瘴気がこの場に潜んでいる…」
その言動に、少しばかり不気味さも感じられるが、彼女は仲間にとって欠かせない存在なのだ。
布野大美は、不安そうな表情で仲間たちのやり取りを見守っていた。不安が胸をよぎるものの、冷静な観察力を働かせ、慎重に状況を把握することに努めていた。
「きっと…何か悪いことが起こるに違いない…」
その悲観的な視点が、かえって周囲の注意を高める助けにもなる。
束が神社に到着した頃、異変の中心地である影が揺れ動き、ついにその姿を現した。それは不気味な黒い霧が凝縮し、何か生物のように形を取ったかのようだった。
「こいつか…!」
束は長い足で素早く動き、影の生物に近づいた。しかし、影は霧のように分散し、束が掴もうとする瞬間に形を変えた。そこで、力男が臆病ながらも勇気を出して、遠くからその影を掴むために腕を伸ばした。力男の腕は村の神社まで届き、ついに影を捕らえることに成功する。
勇気がその音を聞きつけ、「今だ!」と声をあげると、静六もその声を響かせ、仲間たちにタイミングを伝えた。終が手を伸ばして影の周りに結界のようなものを作り出し、ニノが影の毒性を見極めると、それは村人に害を及ぼすような性質を持っていると判断された。
幸がその場面を見届け、「やっぱり、お前たちがいるから大丈夫だ」と心の中で思った。この瞬間、彼らの能力が一つになり、影を無力化することに成功した。
夜が明け、村は再び静寂を取り戻した。仲間たちは遠く離れた場所からそれぞれの能力を駆使し、また一つの危機を回避することができたのだ。
「やったな、みんな。次も頼むよ」と幸が感謝の言葉を伝えると、皆がそれぞれの場所で微笑み、安堵のため息をついた。
これが、八人の全国を守る旅の始まりだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます