エイト

蛇トロ

プロローグ

東京の夜は静かだった。ビルの窓に映る街の明かりが煌めく中、目沼幸はいつものようにベランダで星空を眺めていた。しかし、その視線は何も見えないはずの遠方へと向けられている。そう、幸は「見えて」いたのだ──他の誰も見えない場所、遠く離れた場所までも。


視線の先には、数百キロ離れた小さな村が映っていた。村の一角にある古い神社。最近、そこで妙な事件が続いているという知らせが、彼の元に届いていた。次の瞬間、幸は顔を引き締め、スマートフォンを手に取り連絡を開始する。ここから、全国に散らばる仲間たちへとメッセージが送られた。




幸からのメッセージを受け取った犬鳴力男は、急いで画面を確認した。しかし、手元のスマートフォンが震える度に彼の胸も小さく震えていた。何か起こるかもしれないという不安に押しつぶされそうになるのを、必死に押し殺しながらも、「今回は自分も役に立てるかもしれない」と、心の中で自分を奮い立たせる。


そのころ、離れた場所でそのやりとりを静かに見守る者がいた。美耳勇気。彼は誰よりも冷静に、そして頼もしい存在であると自負していた。今や遠くの音までも聞き取れる能力が、自分の存在意義を確かにしてくれている。この仲間たちと共に行動することが、自分の使命であり誇りなのだ。




一方、南静六はこの緊急の呼びかけを見て、静かに胸を張りながら、静かな決意を固めていた。自分には声を届ける力がある。離れた仲間の元に、必要な情報と声を届ける役目を果たすべきだ、と。


さらに、どこかしら元気いっぱいの朝火奈 束が、いつも通り「今すぐ行ってやる!」と笑顔で叫んだ。彼女の力はその足に宿り、迅速な行動を可能にしていた。数百キロの距離も、彼女にとっては短距離に過ぎない。どんな困難でも、一番に飛び込む準備はできている。


束の妹、朝比奈 終は冷静だった。画面に集中し、知識を駆使して、村の地図や事件の経緯を整理し始める。彼女の手は、まるで数百キロ先まで情報を拾い集めるかのように素早く動いていた。兄弟でありながらも、異なる方向性で事件解決に挑む決意を固めている。




霜野ニノはというと、画面を覗きながら「また闇の気配が…」と呟き、どこか誇らしげな表情を浮かべた。自らを「闇の探索者」と称し、厨二病をこじらせてはいるが、仲間には大切な能力として認識されている。彼女の長い舌は、数百キロの先の毒や危険な物質さえも感じ取ることができる。


布野大美は、スクリーンに表示された幸からのメッセージに目を細めた。彼女の悲観的な視点は、何か悪いことが起こる前兆といつも感じていた。だが、その慎重な視点が危機回避に繋がることも少なくない。全国の仲間が彼女の不安を支え、彼女もその悲観的な視点を持って仲間を守る覚悟を決めている。




こうして、全国に散らばる八人の仲間たちが、バラバラでありながらも一つの目的に向かって結集しようとしていた。彼らの特殊な力が、これからどんな問題を解決し、どのようにして人々の安全を守っていくのか──その物語が今、幕を開ける。

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