第10話 風紀委員、ウィリアム登場!

魔法学園コンサドーレに、始業ベルが鳴ると、生徒たちは廊下から教室に吸い込まるように、元の座席に戻った。

一方、教員会議の途中から、話し込んでいたメギド先生とミライ先生は、新しい風紀委員を任命して、事態の収拾を図るように、職員室から誰もいなくなった廊下で立ち話を囁き合った。

「君は、ギルバードくんよりも、学年が2つ下だったな」

メギド先生が尋ねると、

「押忍!」

後輩の応援団員から、先生に推薦されたウィリアムは、元気よく答えた。

「あのね、つまりね、私たち指導部からすると、男か女か分からない服装、言葉遣い、生活面の態度っていうのは、非常に困るのよね」

「押忍!」

ミライ先生は、非常に困った様子で、「あなたね、私の話を聞いていた?」ということで、腹が立っている。

「自分は下級生であり、れっきとした女でありますから!」

「わかってりゃ、いいんだけどね」

「押忍!」

ミライ先生は、こりゃ、人選ミスだわねと呟いて、呆れかえった。

隣りにいるメギド先生は、ルーン文字辞書を傍らに抱えていた。今回の生徒たちの失踪の責任を取って、とりあえず、始末書で処分された他、生徒の捜索を一任されるという、間違いなく魔法学園の無責任な体質が明るみになったのである。

「私が、次元魔法を使って、ワームホールを開くので、そこをくぐり抜けて、姉妹都市のゲインズプールまで行ってほしいというわけなんだ」

メギド先生に続いて、ミライ先生もお説教を兼ねて話し始めた。

「時空間の魔法と違って、高度な詠唱技術が必要になるのが、次元魔法だから、メギド先生は、誰よりも必死で、古典を渉猟してたのよ」

そう云うと、ウィリアムは、風紀委員の要領で、

「じゃあ、話は早い方がいいですね。自分は、ゲインズプールまで行って、田園地帯を中心に、隅から隅まで捜索すればいいわけですね」

「そうね。実際、姿を隠していて、次元時計にも映ってないということだわ。じゃあ、購買部でお昼を買って、みんなに食料を持って行ってあげてほしいの」

ウィリアムは、納得して、

「自分は、早目に昼食を済ませたほうがよさそうですね」

「そうね」

「押忍。ゴチになります!!」

ミライ先生は、大きく溜め息をついて、うなだれた。


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