第9話 合言葉はグッバイ・ゲインズプール

保安官に手錠をして、ロープでぐるぐる巻きにして、口を塞いだ頃、教会の干し草から火の手が上がり、煙が立ち込めて、視界が悪くなった。

逃亡した6人と1匹の黒猫は、早速、馬小屋を襲って、ひとりずつ、馬に乗って、別れの挨拶を交わした。

「また、ゲインズプールで!」と澤田さんが馬で走り出すと、

「そうだな、あの裏通りの酒場で!」とクウヤも意を同じくした。

「了解!」と機械好きの男が云う。

作戦成功とテンガロンハットを頭に乗せたアンドロ、

ギルバードは、指笛を鳴らして、村人たちに知らせる。

そして、彼らは、四方に向かって、散っていった。


田園地帯から6騎の馬が走り出して、隊列を組み、自ずから、崖に掛かっている吊り橋を通り抜けていった。

そして、吊り橋を燃やし尽くして、川に墜落させ、追っ手を防いだ。

馬の蹄鉄が土を蹴って、草原の風向きを変えていた。

テンガロンハットを頭にしたアンドロが、後ろ振りむくと、教会から煙を上げ、追っ手の神父が馬に乗って、崖っぷちで立ち尽くしている。

「あいつ、変態なんだよ。視線が気持ち悪ぃ!」

「じゃあな、世界の弾丸!」

3騎ずつ、左右に分かれて、ゲインズプールを目指して疾走する。

途中、銃座を焼き払い、大戦の名残を壊していく。

森を避けて、トーナメント表の阿弥陀くじのように分岐に分岐を重ねて、単騎に戻って、将来の再会を分かち合う。

朝靄が周囲を立ち込め始めると、夜明け前の暗さに亀裂が走り、朝日が地平線の下に隠れている。

途中で立ち止まることなく、騎乗でパンを食べる者あり、鞄に私財を奪うものあり、教会を焼き払うものあり、赤く染め抜いた旗手を持つものあり、魔法学園の生徒たちは、召喚魔法でイフリートを呼び出し、窮地の脱出を成し遂げた。

しかし、この先、6割ちょっとは、誰も知らない。


第1章・おわり


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