第8話 保安官の取り調べ室
神父は「 狭い門から入りなさい。 滅びに至る門は大きく、その道は広く・・・」と聖書を読み上げて、取り調べに同席している。
目の前には、不審な6人が大きな机を前に勢揃いして、手錠をロープで繋いで座らされ、保安官が、書面を読んで、聴取を始める。
「これから発言する言葉は、法的効力を持ち、一切の嘘は罰せられる。尚、虚偽の供述をした場合は、連邦政府の法廷決議、第40号に基づいて、重い刑罰が科せられる上に」
保安官は、ゴホンと咳払いして、
「司法取引等の効力を取り消すことになる」
保安官が、神父に目配せして、なぜか、退席する。
「これから聞くことは、お前らが、犯罪を認めるかどうかで、全てが違ってくる。まず、連邦政府の目が届くとは考えられん。だが、その逆も然りだ。一応、任意聴取だからな、楽しくやろうじゃないか」
クウヤが横を向いて、肩をすくませながら、座禅を編むと、鞄の中から黒いものが零れ落ちた。
保安官は、机をドンと殴り、大声で怒鳴り始めた。
「黙秘か。いいだろう。絶対に自白させてやるからな」といって、これまでの犯罪の履歴を調べたところと・・・延々、説教が始まる中で、全員がシラを切るしかないというか、元々、犯罪に手を染めたことはなく、心当たりはなかった。
ギルバード先輩は言った。
「説教をするなら神父さんのほうがよかったな。よく夫婦喧嘩になりませんね」
何だと!貴様ら!と大声を出して、机を蹴り上げた、そこで照明のランプの左右に揺れて、火が燃えたぎっていた。
日が暮れて、犬が吠えると、闇夜の中に月はなかった。曇っているのである。
相変わらず、保安官は、怒鳴りっぱなしだった。
ところが、その頃、小さなわれわれの戦闘員が手錠の鍵を探して、保安官の犬の目を盗んで、その捜索を続けていた。
黒い油のように素早い脚力で、鍵を咥え込んで、瞬く間にクウヤの鞄に戻り、後ろ手には、鍵が握られていた。
「貴様らのような人間がいることで、こうした安全な小麦畑に重税が圧し掛かり、危険極まりない<世界の弾丸>というテロ組織の脅威から身を守る最善の策が・・・」
「後生のためになります」と澤田さんが、演説の腰を折った。
保安官は、内心、激怒している。
「おい、お前。いい度胸だな。よし、貴様の供述からだ。仲間を売ることは、この世の理が許さんとも言うな。だったら、真犯人を白状するんだ。そこの女か?坊主か?それとも、親友を売り飛ばすか?なるべく早い方がいい。白状するんだったら、目障りな奴から消すもんだ。善は急げともいうな、早くしてくれ」
「というのは?なぜ、内部犯行説をお取りになるのです?」
出来る限り、保安官の肩を揉んだ。
「状況から見て、お前らしかおらんからだ。悪知恵を働かせたのは、そこのムスカ=スートラという奴だ。おれの方がキャリアは長い、世の中、年長者の意見を尊重するもんだ。ガキは黙って、白状するのが長生きのコツなんだ。わかったか?」
列車の後ろの方にいた乗客は、ひとりずつ写真を撮られて、保安官のコルクボードに押しピンに刺され、乱暴に貼ってあった。
ムスカは、みんなに目配せして、意を決して頷き合った。
「おい訊いてるか、お前に喋ってるんだぞ」といって、顎をひっぱたこうとしたとき、全員が机を蹴り上げて、ランプの灯を吹き消した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます