第4話 列車泥棒の犯人を捜して

車窓から蒸気が列車の中に入り込んで、視界は最悪であった。ムスカ=スートラは、気絶した澤田さんを揺り起こして、クウヤと声を掛け合った。

「ダルマ大師、ここは、どこだろう?」

「一旦、外に出てみなければ、何も判らん」

女生徒のアンドロは、肩を回しながら、ヤル気になっている。

「列車ドロの奴ら、おれは許さねぇ!」

機械好きのジャマンサは、大きな身体を自分で持ち上げて、静かに溜め息をついた。

「まず、自分たちの安全確保だ」

澤田さんは、目を回しながら、正気に戻っていた。

「うーん、そもそも、この列車の中が、いちばん安全じゃないのか?」

キョトンとした皆々は、一瞬、気取られながら、虚を突かれた。

一同が、衣服の埃を払って、余計、咳き込んだのは、アンドロである。

「お前らの服、汚れ過ぎなんだよ」

ニャーニャー鳴いてるのは、クウヤの鞄にいる黒猫だ。

顔を見合わせながら、安全を確認した。

「さぁ、どうする?」とムスカが確認すると、

「いちばん前の車両が気になるな」とクウヤは応答するが、

「よし、おれが扉を開けていくからな」

早くもジャマンサが、そっと最前線に立ち、木目を気にしながら抜き足、差し足、座席のシートに誰もいないか確認すると、次の車両に移るため、扉を開けていく。

もやが立ち込めているので、視界は良好とはいえない。

一番後ろから、威勢のいいアンドロが

「<世界の弾丸>っていったよな・・・」と慎重に呟く。

澤田さんは、「テロリストだな」と核心を思う。

魔法学校の生徒たちは、次々に左右を確認して、前の車両に移って行く。

クウヤの鞄から黒猫が顔を出したので、

アンドロが声を落として、「シーッ、黙ってろ」と促した。

すると、黒猫は、また、鞄の中にもぐってしまった。

澤田さんは、「ここが先頭だが・・・静かすぎる点が気になるな」と意味深である。

ジャマンサが力づくで鉄の門扉を開け、こっちこっちと合図を送る。

ムスカが頷く。

クウヤは足早に突入すると、

「ん?意識がないな」

「こっちもだ」とアンドロが答えた。

澤田さんは、意を決して

「列車ドロ、複数犯2名、被疑者は死亡」と締め括った。

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