第3話 暴走列車は止まらない
虹のオーロラに包まれて、線路をひた走る汽車は、重厚な鉄の扉のように門扉を閉ざして、全速力でワームホールを突っ切った。すると、丘に続く路線を際どく切り替えて、猛スピードで崖の下を、汽笛を鳴らして、くぐり抜けていく。そして、
大きな満月が垣間見えたが、湖上の鉄道は、まだ、止まる予感さえなく終着駅に向かって、突進していた。
湖を抜けると、岸辺に乗り上げ、土埃を巻き上げたまま、森の茂みに踏み込んでいく。樹林の住人たちは、キィキィと鳴き、カラスたちは危険を察知して、森から飛び去った。蔦を破りながら、汽車の暴走は止まらず、煙が森の中を立ち込める。
もっと森の奥深くを、彷徨うことなく、閉塞した単線に変わった路線図に案内されるように、最短距離を行く。
サルの一族が見届けて、木々の枝を渡っている。
終着駅<ゼイレ墓場>が見えてきたが、尚、視界は悪く、巨大だが、しかし、狂ったトロッコのように駅の停止信号を無視して、突き破っていった。
霧が晴れたかと思うと、岩場に差し掛かり、何度も衝突しながら名残惜しくも速度を緩めて、到頭、止まった場所は、風が強く吹き荒れる。
そこは、田園地帯であった。畑が点々としてあって、雲が流れ、今にも雨が降り出しそうだ。しかし、不安定な気候は、ときどき、太陽が顔を見せ、小麦畑の農耕に適した場所だと告げていた。
もの凄い距離を逆走している。
そして、鼻息を荒くするように、汽車は最後の蒸気を吹き出して、頑固者のように断乎として動きを止めてしまった。
ここで暴走列車が止まったのは、恐らく、燃料切れであった。
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