第11話 魔王が死んだら?
「終わったか」
俺はベルファーを見事? に倒した。
冷たくなったベルファーの遺体が赤いカーペットの上に転がっている。
「ごめんな、ベルファー」
俺はベルファーの遺体に手を合わせる。
日本人の心が廃れていないおかげだろうか。
ベルファーを殺したのは俺なのに、俺はベルファーの遺体を丁重に扱った。
「……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
胸の奥底、心が悲鳴を上げ、ついに叫んだ。
如何して俺がこんな目に遭うのか。いや、違う。こんなよく分からない、異世界? っていうのか知らないけど、多分マジの魔王? を倒してしまった。
しかもこんな格好をした。何処から如何見ても、俺の方が魔王っぽいのにと思いながら、俺の絶叫は続いた。
「もう訳が分からないんだけど!? 一体何がどうなってこうなった? 一の前に〇すら分からない。あのゲームか? あのゲームのせいなのか? ここまでリアルだと、最新のVRゲーム……な訳も無いか。あー、誰か教えてくれ!」
もはやカガヤキの威厳は何処にも無い。
完全に晃陽に戻った俺は、ベルファーが先程まで座っていた金の椅子にもたれかかった。
「はぁー、なんでこうなった? 異世界転生なんて、フィクションだろ」
異世界転生は所詮、アニメや漫画の中だけの話。
つまり俺は超リアルな夢を見続けている。
そう、これは明晰夢だ。自覚のある夢だからこそ、異世界だと勘違いした。きっとそうに違いない。
俺の思い込みレベルだと、ここまでが関の山で、それ以上は想像もできなかった。
「はぁー。ベルファーに、ここが異世界かどうかくらい、聞いておけばよかった」
俺は呆れたことを言った。
あの状況で、ベルファーがまともに会話してくれる筈もない。
結果として、俺の疑問は残ったまま。ましてやここが何処の何なのかも分からないまま、項垂れてしまう。
「はぁー、誰か来ないかな」
あまりにもフラグを立ててしまった。
けれど、話がまともにできる相手ならそれでもいい。
できれば戦いたくはない。穏便に話し合いで解決できるような、もっとフレンドリーな関係をと、なんやかんや想像してしまった。
「ここだな!」
「フラグ回収来た! ……はっ?」
圧倒的スピード回収。
俺は立てたばかりのフラグが回収されて喜び、項垂れていた様子から一変、振り返って扉を見る。
そこに居たのは四人の男女。
年齢は俺とほとんど変わらないと思うけど、格好が現代人っぽくない。
アニメと漫画・もっと言えばゲームに出て来るような冒険者の格好をしている。
「誰だ、お前達?」
「俺達は、お前を殺すためにやって来た勇者パーティーだ!」
「勇者……なんって?」
ごめん、なに言ったんだ。俺は聞き返してしまった。
もし、俺の耳が耄碌していなかったら、“勇者パーティー”とかバカなことを言っていた。
確かに魔王がいるなら勇者も居る。そんな気はするけど、如何してここにやって来るんだ? それになにより、俺のことを殺すみたいな発言。
流石に誹謗中傷罪で訴えてもいいんじゃないかと思ったが、案の定だった。
「俺達は勇者パーティー、魔王であるベルファー・ベルムグリンドを倒しにやって来た。さぁ、俺達と戦え!」
ああ、そう言うこと。そう言うことね。
コイツら、俺のことを魔王だと思っている。
しかも、俺が死力を尽くして倒した、ベルファー・ベルムグリンドだと思い込んでいた。
「あのさ、俺はベルファーじゃなくて」
「魔王の言葉など聞くか! 覚悟しろ、お前の命貰うぞ」
「はぁー、勇者っぽくない発言だな」
落胆してしまう俺だったが、如何やら本気らしい。
一種視線を落とした瞬間、勇者っぽい格好をした少年が飛び掛かって来る。
真白に輝く剣を振るい、この俺に勝負を挑むのだった。本当に、面倒臭いと心の中で苛立って。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます