第8話 対決:自称魔王VS設定魔王2

 自称魔王=ベルファーと火花を散らした。

 先にベルファーが仕掛けて来たのが好都合。

 ここからは、設定上最強で無敵の魔王の力を、いかんなく発揮できる。


(それじゃあやるぞ、カガヤキ!)


 俺はカガヤキの設定を思い出す。

 確か友人A雷斗友人B美玲と空騒ぎで考えたネタだ。

 俺が纏めたとはいえ、VTuberだとその設定はキャラでしかない。

 どんな魔法が使えるんだっけ? 思いだせ、確か……


 カチッ


「ん?」


 俺はヘッドホンの右上部に付いたボタンを押していた。

 体が無意識に勝手に動いた感覚だ。

 一体何が起きた? と思ったのも一瞬で、急に視界に色付きフィルターが入る。

 如何やらヘッドホンの設定、バイザーモードがオンになったらしい。


「流石特注仕様のヘッドホン。バイザーモードってことは、検索を使える」

「さっきからなにを言っている」

「ああ、少し待って。相手するから。えーっと、確か、あっこれだ」


 視線でバイザーモードの検索機能を使った。

 早速出て来た設定上最強・宙の魔王:カガヤキ・トライスティルの設定。

 その中でも今欲しいのは、カガヤキ・トライスティルの魔法だ。


「星に関する魔法なのは覚えてたけど、まさかコンパス座以外にこんなにたくさんあるなんて……改めてみると、凄いな」


 俺は一人で達観してしまった。

 そんな中、健気に待ってくれていたベルファーも苛立っている。

 舞おうとしての器と言うべきか、何と言うべきか、せっかちな性格をしていた。


「おい、まだか!」

「いや、大体分かったからいいよ。さぁ、やろうか……γ星の雷撃ガンマ・サンダー!」


 俺は右腕を振り上げ、魔法を唱えた。

 ベルファーの真上に小さな光の玉が現れると、一気に膨れ上がり、魔法陣を描く。

 バチバチと紫の稲妻を放出すると、魔法陣から何本もの雷を落とした。


 ゴロゴロゴロゴロ……バシュン! バシュン、バシュン!!


「この程度か……」

「まあ、だろうけど」


 ベルファーは全身から炎を出した。

 怒りの炎と言うべきか、雷が落ちて直撃する前に、雷を焼き払った。

 あまりにもファンタジー。あまりにも異次元。俺は喉の奥が乾くと、ベルファーの本気を目の当たりにする。


「やっぱり手は抜けないか」

「手を抜くだと? いい加減にしろ、カガヤキ。本気でかかって来い、この我を殺す程な」

「殺す程、ねぇ」


 それだとまるで、俺が殺人鬼みたいだ。

 流石にそこまで非道にも非常にもなり切れない。

 だけどカガヤキならどうだろうか? カガヤキは魔王の力を持った人間。

 もし、魔王の力が残っているのなら、それは本当に設定上じゃない本物の魔王にでも……


「お前が殺す気になれないのなら、我が殺してやろう。光栄に思うがいい、ベルボルケーノ!」

「ボルケーノ? マグマはヤバいって」


 ベルファーはファイア→フレイム→ボルケーノのと着実に強化している。

 現れた魔法陣からは、大量のマグマが流れ込む。

 まるで激流だ。部屋中を覆い尽くす程で、立っていられない熱に侵される。


「あ、熱い……」

「我の魔法は炎そのもの。あらゆる水を蒸発させ、塵も残さぬ。我を熱く、燃え滾らせろ。本気で殺せ、殺せるものなら殺してみよ!」

「ったく、自殺願望なんて厄介だな。そんなことしたら、俺が幇助したことになるだろ」

「そんな難しい言葉、我は知らん」

「なんでそこだけ知らないんだよ!」


 俺のツッコミが冴え渡った。

 代わりにベルボルケーノのマグマ攻撃に飲み込まれてしまう。

 全身が熱い。流石に耐えられない……ことも無いが、身動きが取れない。

 なんとかしないと本気で溶かされる。殺される。切羽詰まる中、俺はベルファーをガチで憎しむと、殺す程本気になるしかなかった。

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