雨音零の物語・・・

雨音零

序章

××年××月××日、とある田舎町で僕は生まれた。

生物学上、戸籍上は女な僕だけど、幼少期から男の子に間違えられることが多かった。まぁ、サッカーを始めて髪を短くしたのも理由の1つだろうけど。

間違えられ続けていたからなのか、それとも生まれた時からなのかはわからないけど、性別に固執はしていなかった。周りが男の子というなら男の子でよかったし、女の子を望むのであれば女の子になった。

流されやすい性格、いや、周りに合わせられる柔軟さがある、と言えば聞こえはいいのかもしれない。ただ今思うと傷つかないための、自己防衛での考えだったのかもしれない。


そんな僕は物心ついた時から、絵本等の物語を読むのが好きだった。

母親に読み聞かせてもらった内容を全部覚え、文字はまだ読めないけど母親の真似をして、覚えている物語の本を開き声に出して読んだ。

たまには絵本のイラストを見ながら、勝手に別の物語を作っていたりもした。

当時の物語の主人公はみんな性別がはっきりしていて、秀でた何かと自分の意思を強く持っていた。僕はそんな物語の主人公になりたかった。

でも僕には何も才がなく、世の中で普通と言われている子に擬態するのが精一杯。どれだけ背伸びをしても普通のレールからは外れないし、主人公になれるような意思の強さもない。

だから影を消して、普通の子、手のかからない子になった。なろうとした。

物語で言えば主人公と同じ学校の生徒程度の人生。

決して自分にはスポットライトは当たらない。

それもそれで楽しそうだ、自分が精一杯やっているのならいいじゃないか、と自分自身に言い聞かせた。


時は進み、僕は大学を卒業し、社会人になった。

変わり映えのしない毎日。終わりの見えない就業。

社会の歯車として誰かのためになっているんだろうけど、それが目に見えてはわからない。僕はまた主人公になりたい、そう思ってしまった。

でも僕は主人公になれない。ううん、なれないんじゃなくてなりたくないんだ。

本当になりたいのならこの人生、主人公になるための分岐はいくつもあった。

だけどそれを選ばなかったのも僕だ。

僕が主人公として前に立つ物語よりも、僕が影の立役者になり成功する主人公が見たい。

それなら僕が主人公となる人物をプロデュースして、その方の影になればいいんだ。


そして2024年6月22日、ここから雨音零の物語が始まる。

そう、これは僕と貴方で紡ぐ、Vライバー雨音零の物語…。

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雨音零の物語・・・ 雨音零 @amaotorei

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