第11話

「ふむ、それでうぬは先にバス停近くの食堂で済ませてきたと」


テオは自室に戻るとネコの為の食事を用意していた。


「仕方ないじゃないですか。サナさんのお父さん、久々に二人で帰れらると思ったのになぁ、なんて言うもんですから。僕も咄嗟に気を利かせてですねぇ」


「で、食堂に駆けこんだと…… はあ、我も久々にうぬと食事を共に出来ると思うていたのだがのう」


「それを言われると弱いなあ。なら、僕ももう少し飲みたい気分なんで、チーズでも切ってしまいますよ」


「うむ、それがよいであろうて。うぬも何か聞きたい事があるのではないか?」


「聞きたい事ですか……? 緋色の探求の感想はこの前に聞きましたしねぇ…… よし、出来た。ネコさんどこで食べますか?」


「では。バルコニーに行こう、寒くはなったが我慢できんほどではまだ無い」


「好きですねぇ。明日はぐっと冷え込むそうですから、僕は今日がそろそろ今年最後のバルコニーになりそうですかねぇ」


「ああ。それに今日は満月である」言いながら香箱座りを解き椅子の上で起き上がると猫科動物に特有の伸びをする。


「ネコさんは好きですね、月見…… ああ、そっか。勇者様が新暦にこだわった理由、教えてくれるんでしたね」


「まさしく」ピョンと椅子から飛び降りるとネコは言った。


「そのことである。そのこと…… さて、バルコニーに運ぶがよい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る