第9話
「あれ? それまでに会話は無かったのですか?」
バスは王都の中心部から離れるにつぎ、次第に乗客が少なくなり、数える程となった頃、サナの語りの呼吸を読んでテオが質問を投げた。
「ええ、そうなんです。あの一件の頃は自室にこもってたりが多かったので、だいたいは母が対応してましたから」
「そうか、そうでしたね。あれ? でもツウとどのタイミングで仲良くなったんです? 憲兵隊ならその後すぐ撤収するのでは?」
「ええ。その通りなのですが、猫ちゃん用のトイレと囲、お題を支払ってなかった事に翌日気がついたんです。それで、中佐さんに聞いたらツウちゃんが個人で用意した物だとかで。中佐さんに取り次いでいただいてツウちゃんに支払う旨をお伝えしたのですが。後日中佐さんから家で使っていた古い物だからと、むしろ引き取っていただいて助かっているくらいだからと、そう言っていたからと支払いを拒まれてしまったんです」
「ああ、ツウのよく使う手口、というか方便ですね」
「そうなんです、今でこそ方便とわかるのですけとね。でも、当時はどう見てもトイレも囲も新品だったので、そんな筈はないと中佐さんにご相談したんです。中佐さんも中佐さんでツウちゃんが実はカッツォ商会のご令嬢で、超のつくくらいのお金持ちだから、毎日とは言わないまでも毎週のように猫用のトイレも買い替えるかもしれませんな、そのあまりでしょう。なんて言うものですから困っちゃて」
「ああ、あはは。その中佐さんってサナさんが掛けているようなメガネを掛けてらっしゃる?」
「ええ、もしかして中佐さんをご存じでした?」
「ええ、思い当たる人が一人。その人なら確かに出世されましたね」
「よくお会いになられるのですか?」
「よくという程でもありませんが。定期的に…… 」
テオが「会いますよ」と言うと同時、キキイとブレーキの音を立てたバスが停まった。
「サナさんも最寄りはこのバス停だとツウから聞きましたが?」
「ええ…… あら? いつの間に」
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