第7話

「ツウがですか」


二人はまばらに混雑したバスの座席に横並びに腰かけ揺られていた。


「ええ、ツウちゃんが」


「先ほど犯人は捕まらなかったと」


「ええ、言いましたね」と言うとサナはニコリと笑った。交差点で交通誘導をする誘導員の笛が鳴った。


「ツウちゃんが猫ちゃんを捕まえてきたんです」


「猫、ですか…… なるほど、それは確かに犯人ではないですね」


「それも珍しい鍵尻尾の猫ちゃんを」


サナは人差し指を曲げて鍵尻尾の形を作るとテオに見せた。


「鍵尻尾ですか、最近は高値で取引されるそうで」


「みたいですね。王国でこそ珍しいですが、噂に聞く遠くの島国では何匹かに一匹は鍵尻尾ちゃんらしいですよ。なので、商魂たくましい商人がわざわざ海を渡って買いに行くそうですね。とはいえ王都では最近はその島国の猫ちゃんが貴族様のお屋敷から逃げ出したとかで、その子供たちなのでしょうね、街中でも見るようになりました」


「そうなのですか。僕はまだ見た事が無いなあ」


「あら。じゃあ今度、家に見に来られます?」


「サナさんの家にですか?」


「ええ、母と父と私、あと猫が3匹暮らしてます、その内の1匹が鍵尻尾なんです」


「鍵尻尾の猫、見てみたいな。今回の付き纏いの件が落ち着けば是非…… あ、もしかして。その猫ちゃんが、ツウが捕まえたっていう」


「いいえ。今いる猫ちゃんはそのの子どもたちです」


「あ。子どもたち、ですか」


「ええ。ツウちゃんが捕まえてきてくれた猫ちゃんを私たちは引き取りました。んー、引き取ったというか居ついたが正しいのかな? ツウちゃんがその猫を捕まえて、最初はみんな信じていなかったのですが、その日も置かれていた玄関先の小動物、その日は小鳥でした。で、その小鳥さんをみたツウちゃんが一言、下手人はコイツです、と」


「……歯形かな?」


「あら。お分かりですか」


「たまたまです、ツウならその辺を調べるかなと」


「すごいですね、ツウちゃんの事、よく解ってるんだ」


「いや、たまたまですよ」


「たまたまにしてもすごいと思いますよ?」

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