第116話
2021年の新春を迎えた。三箇日が終わり、4日には自主映画クランクアップの日だった。クランクインした9月の頃と違い、外は肌寒く、キャストスタッフ一同、ロケには一苦労。ヒロイン役の女優は夕方にはクランクアップをし、僕は一人だけのシーンをいくつか撮った後、無事にクランクアップをした。実際、撮影は終わったものの声の収録が後日あるため、正確には完全に終わったわけではないが、撮影が終わったことにひと段落だった。
その週末は、新年最初のアカデミーレッスンが行われ、4月中旬に本番を迎える成果発表会に向けて、稽古を重ねていた。だがコロナ禍の間で、運営で作成したガイドラインに則り、レッスン中は常にマスク着用をし、適度な換気と消毒を行わなければならず、また演出上を除いてはソーシャルディスタンスで稽古をしなければいけなかったので、コロナ前と比べるととにかく不便だった。
それから数日経ったある日。コンビニでアルバイトをしている弟が体調不良を訴えて、バイト先を早引きしてきた。接客業であるため、コンビニのオーナーからPCR検査を受けるように言われた弟は、翌日保健所に行き、検査を受けてきた。その翌日、弟の携帯電話宛に保健所から連絡があった。PCR検査の結果は陽性。その日のうちに弟は体調が悪化し、ホテル療養を余儀なくされた。また、同居している家族も濃厚接触者の対象となったため、翌日父の車で保健所に向かい、唾液収集によるPCR検査を受けた。
濃厚接触者となった以上、外出ができないことが分かっていたため、僕は晩に日本酒を飲んだ。だが、酒の味がしなかった。元々慢性鼻炎だったので、これは鼻づまりの症状だろうと自分に言い聞かせていた。コロナに感染し、味覚障害になっているとは思いたくなかったのだ。翌日、家の固定電話に保健所から連絡がかかってきた。母が電話を取り、報告を受けた。結果は家族全員陽性であった。
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