第114話
映画企画の話を持ってきた監督は、名古屋の大学院生の方で、これまで数々の自主映画を製作し、僕も名前は聞いたことがあった。映画撮影となるとスケジュール調整もあるため、僕はチョイ役で出られれば本望だと思っていた。しばらくして、監督からオーディションの前に一度お会いしたいと連絡をいただき、僕はキャンパスを訪れた。
直接会うのはこの時が初めてだったのだが、ここで僕が聞かされたのは、今回の映画の主役をお願いしたいということだった。脚本や制作として映像の現場に携わったことはあったものの、映像での演技経験もなければ、ましてや主役を務めるなど重責以外の何物でもなかった。しかも今作は、監督にとって学生生活最後の卒業制作作品となるのだが、僕が主役の映画など「ああ、これはコケるな」と思ってしまった。
だが、KKからは既に了承を得ていると聞かされ、僕はオファーを受け入れた。
しばらくして台本が届き、僕はそれを読んで驚愕した。尺は何と50分前後で、シーンは38場面あり、そのうち僕が出演するのは37シーンもあった。つまり、ほぼ50分僕は出ずっぱりということになる。哲学的なセリフが多く、クランクインまでの約2ヶ月、僕は仕事の合間に台本とにらめっこする日々が続いた。
9月のシルバーウィーク初日が、クランクインとなった。共演者は事務所所属のヒロイン役の女子高生と、もう一人の女性、アカデミーからは小学生メンバーが2人、そしてアカデミーで歌唱講師をするJHは親友役として共演することになった。
4日間でほぼ全てのシーンを撮り、10月と11月の僕の誕生日当日にも追撮が行われ、この日をもって僕とヒロイン役以外は全員クランクアップとなった。
年明け1月に1度撮影を控えて、年内の撮影はこれで終わった。11月の撮影が終わって間もなく、パフォーマンスグループメンバーで中学教師をしていたIRから相談があると言って珍しく連絡をもらった。
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