第113話

緊急事態宣言が解除されてしばらく経った後、アカデミーレッスンは再開されたものの、僕は延期やキャンセルになった仕事の対応をすることになったことで2ヶ月近くお休みの状態が続いていた。ようやく仕事の方でもひと段落つき、YMが退院をするタイミングでビデオレター企画も成功を収めたことで、僕は7月の中旬になり、休校以来約3ヶ月半ぶりにレッスンに足を運んだ。

久しぶりに対面で僕と会う子どもたちは、元気にはしゃいでくれた。『よその子どもは成長が早い』という言葉があるように、メンバーの子どもたちも3ヶ月半近く会ってないだけで大きくなったような気がした。メンバーのうち数人は、僕が広島に行ってから今日復帰するまでの間に小学校の卒業式を終えて、中学生になっていた。コロナは時の流れも止めてしまうものだと感じていた。


ある日、僕はLOと共にようやくKKがオーナーを務めるカフェに行くことができた。あいにく本人は不在だったが、LOと共に休校中の約3ヶ月半の出来事を報告し合った。鰻屋の娘であるLOからはテイクアウトを始めたことを聞かされた。僕は、地元で何とか経済が回るようにテイクアウトや店舗情報を無料で掲載できる特設ホームページを作ったことや、リモートで作文教室を始めたことを告げた。すると、LOは興味を持ってくれたようで一度教室を受けてみたいと言ってきて、後日受講することが決まった。

それからしばらくは、ずっとひたすらアカデミーレッスンを受講する日々が続いていた。相変わらずダンスは苦手で、歌唱では共鳴ができていないことを指摘された。だがメンバーとのレッスンはとても楽しく、中でもメンバーたちはエチュードが大好きなようで、積極性が見られた。

そんな時、KKから映画企画の話が持ち出され、出演者を募集することになった。チョイ役ならば出てみようと思ったのだが、これがまた僕にとって大きな挑戦の機会になるのだった。

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