第112話
YMが脳腫瘍で倒れたという事実を知り、僕は親友の見舞いにすぐにでも駆け付けたい思いだった。が、コロナの状況下で一般のお見舞いすら叶わない状態である。アカデミーレッスンは休校になり、仕事のキャンセルや延期も続き、今度は親友のお見舞いにも行けないと、これほどコロナという存在を厄介に思ったことはなかった。
大手術の末に一命は取り留め、数日後にはLINEのやり取りも無事にできるようになりホッとした。友人経由で入院した病院も知っていたが、見舞いに行けないのが今の世間の状態だった。同じ県内の病院なのに、コロナのせいで普通に人と会うこともはばかられる。コロナさえなければ、すぐにでも会えるのに。親友のために何もできない自分が悔しくて仕方がなかった。
仕事でずっと発行していたフリーペーパーも、広告業界では広告出稿をする企業や商店が減ったことで継続も困難になり、コロナに関する内容を入れたWEBでの公開という、もはやフリーペーパーではない状態になってしまった。
この頃から、リモート会議が顕著に出始めたことで、僕もパソコンの画面に向かって地方の人や近隣でも集まれない会議等でリモートツールを使用するようになっていた。画面越しでも今はこうして、遠方の人とも対話ができる。
これがヒントになり、コロナだからこそ何かできることをやろうと思い、僕はある一つの企画を考えた。それは、専門学校時代の同級生やYMと接点のあった先輩や後輩、先生たちにビデオメッセージを撮ってもらい、その素材を集めたビデオレターを作ろうということである。
各所に協力を仰ぎ、2週間の締め切りを設け、20人近くのビデオメッセージ素材が集まった。慣れない映像編集をし、僕はYMの退院の日にビデオレターのデータを送った。半身不随となり、これからリハビリ生活になることを聞かされ、少しでもこのビデオレターが励みになってほしいと思った。
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