第107話

3月上旬、新型コロナウイルス感染症が拡大する中、僕は家族に心配される中、4年前に千葉のプロデューサーと一緒に制作した映画の関係者試写会のために東京に来ていた。

当時制作したヤンキー映画の上映会を見ている間、自分の中でどうしてこんなセリフを書いたのだろうと自問自答していた。この映画の企画が動き出したのは、まだ僕が専門学校の頃だった。学校で一人、自習をしながら原稿を書いたことは今となっては良い思い出である。

本当は東京観光をゆっくりしたかったのだが、この状況下のため、翌朝の高速バスに乗ってすぐに愛知へ戻ってきた。

それから間もなくして、僕はLOからカメラの練習をしたいと頼まれて、市民ミュージカルでカップル役を演じたモデルのTAと共に撮影モデルをすることになった。LOはテンションが上がりながら僕たちを撮影し、二言目には「尊い」と言う始末。撮影後の食事でTAから聞かされたのは、コロナの影響で撮影会が全て中止になってしまったということだった。周囲の人間にも、何かしらの影響が出ていることを感じていた。


アカデミーレッスンは通常通り行われている中で、これ以上事態が悪化する前に、しばらく会っていなかった父方の祖父母に会いに行こうと思った。コロナの影響で仕事のキャンセルが続き、スケジュール帳も真っ白に。ここで仕事から解放されて休む時間があっても良いかもしれないと思った僕は、広島への一人旅の件を両親に相談をした。

その後、父が祖母に連絡をしてくれて、広島に行くのは月末と決まった。その直前、3月21日には国内の累計感染者数が1000人を超えることになり、コロナ感染の状況は悪化する一方。幸いにも、この時はまだ愛知も広島も影響がなかったことから、広島への旅は予定通り行うことになった。

そして3月末のある日の夕方、僕はパソコンも持たず、最低限の荷物を詰めたスーツケースを持って新幹線で広島へと向かった。

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