第103話
12月に入って間もなく、僕は市民ミュージカルの打ち上げに参加した。この日、久しぶりにお菓子を振舞おうと、炊飯器で作れる簡単なチョコケーキを用意し、会場に持参した。幹事を任されていたこともあり、受付で出席者の確認をし、他のキャストの方にも一緒に設営を手伝っていただいた。
会場にはスクリーンとプロジェクターが用意されており、市民ミュージカル本番の映像を見ながら、オードブルなどの食事を楽しみという趣向だった。また、春からはKKがカフェをオープンするというので、その試作品もキャストスタッフ一同で食べることになった。
打ち上げの時も、相変わらずRAは僕から離れなかった。年の離れた兄弟みたいだと、周囲の人たちが言うように、RAは可愛らしく僕の膝の上に終始乗っかかっていた。
打ち上げが終わった後、KKは突然発表したいことがあると言い出した。それは、年明けからパフォーマンスグループから体制を変えて、アカデミーレッスンという週1の習い事スタイルにするという内容だった。卒業を告げた自分には関係のない話だと思っていたが、RAが「やらないの?」とつぶらな瞳で僕を見つめるので、その時は笑ってごまかした。
数日後、駅前で開催された飲み歩きイベントに専門学校のメンバーと一緒に足を運んだ。まだ数週間前に共に琵琶湖に行ったばかりだが、思えばこの1年は飲み会も含めて専門学校のメンバーと集まる機会が多かったと感じる。琵琶湖もそうだが、春にもボルダリングとバーベキューをしたことを思い出した。
あの時も、みんなで買い出しに行ったり、アルコールの強いお酒を飲んだり、ボルダリングをした直後だったこともあり、指が筋肉痛になって缶ビールが開けられなかったことなど、楽しい一時があったことを思い出した。
年末が近づいたある日、僕はKKに連絡をした。それは、メンバー卒業を撤回し、アカデミーレッスンに参加するという内容だった。
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