第99話
市民ミュージカルの稽古は基本的に日曜日に行われ、平日や土曜は基本的に自分の仕事をするというスケジュールだったのだが、不思議とこの頃は人と会うことが多くなっていた。
まず、成人式以来に再会したのは、中学からの同級生で高校の時には3年間同じクラスで一度目の生徒会選挙出馬の時に推薦演説をしてくれた友人のO。大学卒業後に、僕と同じように個人事業を立ち上げたことを聞かされ、近況報告も含めて懐かしい話に花を咲かせた。
続いて、仕事のため近くまで来ていたという専門学校時代の親友のYMとも再会を果たした。ファーストフード店でハンバーガーを食べながら、近況の話や懐かしい話をするのだが、僕はふと気になっていたことがあり、YMに尋ねた。それは、入学当初全く接点のない僕にどうして声をかけたのかということ。すると、YMは「声をかけやすかったら」と教えてくれた。その声掛けから、今もこうして友人として会えることを幸せだと思った。
市民ミュージカルの本番は近づいていくのだが、9月のある日、僕はKKやNYたちと共にPRのために市長のもとへ表敬訪問を行った。あくまでメインで話すのはKKやNYで、僕はあくまで運営の一人としての引率に近かったが、これも運営としての重要な役割である。
この表敬訪問の数日後、僕は依頼案件の仕事のため車で岐阜に向かっていた。偶然にも訪問先の近くが母方の祖父母宅があったため、仕事帰りに久しぶりに祖父母や伯母のもとを訪れた。祖父母たちと直接会うのは、奨学金の相談に行った高校3年の冬休み以来だった。祖母や伯母が料理をふるまってくれて、夜遅くに僕は自宅に戻った。
9月下旬の日曜日、リハーサルのため僕たちはミュージカル本番会場のホールを訪れた。それぞれがリハーサルに向けて準備をする休憩時間になった時、僕はエントランスでKKに会い、この公演が終わったらメンバーを卒業するという旨を伝えた。
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