第92話

一度は頓挫した、地元小説家の作品を原作としたミュージカルの企画の話が動き出したのは、ゴールデンウィークが明けて間もなくのことだった。こちらの企画でも、変わらずKKが総合プロデューサーを務めることになり、運営陣には僕や、1年前に市民ミュージカル運営を共にしたTH、そして東京から戻ってきたばかりのKKの娘さんの4人という顔ぶれになった。

作家本人や出版社との連絡は委託事業元である観光協会の窓口となっている市役所の観光課が担当し、僕らはあくまで市役所との打ち合わせや制作業務全般が主な仕事である。脚本と演出はAYが担当することになり、これからキャスト応募にあたりオーディション開催の準備を進めていく話になった。受託先としてパフォーマンスグループの事務局が担当することになったため、KKの判断でグループのメンバーたちに先行オーディションをしようということになった。


そこからの1ヶ月はオーディションの準備のほかにも、夏のミュージカルの稽古場に顔を出したりと、運営として通常業務を続けていたが、6月に入ってすぐ、メンバー副リーダーをしているNRから相談の電話がかかってきた。それは、有志メンバーで夏祭りのステージイベントでバンドとして出場するにあたり、説明会に代わり参加してほしいというものだった。説明会は日曜日の夕方に開催され、ちょうどメンバーたちはミュージカルの稽古と被ってしまっていたのだ。

NRに頼まれ、僕は快く承諾して説明会へ。タイムテーブルは抽選で決まり、時間が被った場合はじゃんけんで決めるルールだったが、あらかじめ聞いていた希望時間に他団体と被ることがなかったため運良くスムーズに出演時間が決定。

説明会終了後、僕は稽古終わりでメンバーが待っている公民館に向かった。説明会で聞いた今後のスケジュールなどを申し送りすると、僕はメンバーたちからバンドチームのマネージャーを担当してほしいと打診された。

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