男、突っ走る!(演劇奮闘篇)
壽倉雅
第91話
2019年4月。新年度になり、パフォーマンスグループのほうではKKが再び代表権限を持った総合プロデューサーとして仕切るようになり、僕は運営専任となったため、毎週日曜日の稽古にも顔を出さず、平日に開催される運営会議への出席にとどまった。
演劇祭で足のケガのことで僕を動揺させたMKは演劇祭の公演を最後にグループを去り、その代わりにこの春に無事に国家資格に合格して晴れて歯科衛生士になったKMや、高校3年生になったRKが復帰し、今はちょうど1年前の夏に僕がデビューした公演と同じ夏祭りの補助金事業として開催されるミュージカルに向けての稽古をしていた。
本来であれば、地元在住の小説家の作品を原作とした市民ミュージカルを、夏祭りに合わせて開催する話が合ったのだが、演劇祭直後に開催された市議会議員選挙によって議会の顔ぶれが変わってしまったことで、この企画は頓挫してしまったというのだ。その代替として、急遽補助金事業に応募し、無事に採択が下りて、今回は初めてKKの書下ろしのミュージカルとして制作が決まったのだ。また今回は本格的にするために、地元でダンス教室を主宰しているMMが振付を担当することになった。
「どんなに金を積まれても、もう二度と演出はしない」と決めて、運営専任になってからしばらく経ってから、専門学校時代に親交のあったパティシエ学科の後輩のHAが転職をするにあたって東京から愛知に戻ってきたという連絡を受け、僕は久しぶりに2人で食事をした。卒業から2年の月日が経ったことに驚いたが、HAが戻ってきたことをきっかけに、これ以降不定期でHAと会うようになった。
しばらく稽古場に顔を出していなかったが、たまには顔を出してよと運営陣に誘われて、僕は久しぶりに稽古場へ顔を出した。顔色が良くなったとメンバーたちに言われ、初めて対面したMMにも自己紹介をし、リスタートしたという空気を実感していた。
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