第55話

功太に言われて麗が持ってきたのは鍋とお玉、包丁とまな板とピーラーだけだった。



麗は自分の不甲斐なさに情けない気持ちになって、少し落ち込んだ。



自分がキャンプなんて提案しなければ、功太が校則まで破って車を出すことはなかったのに…



麗が俯いたのに気付き、功太はどうしたの?と声を掛ける。



麗は思ったことを素直に打ち明け、最後にごめんなさいと言った。



功太はそんなこと気にしないで、と微笑んだ。



麗が困ったような顔をすると、



「今日のこと、麗はすごく楽しみにしてたんでしょ?…二人で楽しい思い出にしようよ」



功太が微笑んだまま、子供にするように麗の頭をポンポンと撫でた。



麗は恥ずかしそうに口を引き結んで、大きくひとつ頷いた。

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