第30話

「手、つなごうか」



功太の言葉に麗はまた顔をあげた。



少し驚きはしたものの、緊張や戸惑いはなく自然と頷いた。



差し出した右手に功太の左手が重なる。



影が繋がる。



大きくて冷たい手。



幼い頃つないだ父親の手の記憶とは違う、男の人の手。



麗は今まで功太に感じていたものとは違う、歯痒いような感情を初めて感じた。

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