第31話

胸に抱えていたショップバッグに視線が注がれているのに気づき、やっと夢の時間が動き出す。



「あっあのっあのっ、これは、違っ…」



恥ずかしくて、なんとか誤魔化そうとCDをバッグにしまいながら後ずさった。



(どうしようどうしよう…よりによって木本くんに見られるなんて…!)



穴があったら入りたい。どこでもドアがあったら飛び込みたい。



逃げ出すこともできずに泣きそうになりながらうつむいていると、



「僕ラノベ買いに来たんですよ。先輩面白いの知ってます?」



彼の口から出た思いがけないワードに、えっと顔を上げる。



(木本くんが、ラノベ?)



「もしよかったら付き合ってくれません?」



奈月はいつもと変わらない笑顔で店内を指差した。

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