第12話

「ここで何してたんですか?」



男性社員はもう一度尋ねてきた。



「…始めて見る方たちだったので、どこの部署の方かと思って…」



嘘は言っていない。尋問のような時間に生きた心地さえしなくて、夢は蚊の鳴くような声で答えた。



「それなら直接声を掛けてくれればよかったじゃないですか。なんか情報を探ってる人かと思っちゃいました」



黒髪の青年は終始笑顔で、屈んだ膝の上で腕を組んでいる。その様子はどこか楽しげにも見えた。



「すいません……」



夢は咎められると思っていたので、少しだけ安心してもう一度謝罪した。



すると、



「はい」



声の意図がわからずに、夢は思わず顔を上げる。

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