第10話

てっきり彼は自分の部署へ帰るものだと思い込んでいた。



少し残念だけど、ここはー



(帰ろう……)



屈んで小さくなったままその場に背を向けたとき、



「何してるんですか?」



「ひぁっ!!」



突然声を掛けられ、思わず変な声が出てしまった。



頭が真っ白になったまま振り向くと、先程まで追いかけていた黒髪の男の子が、夢と同じように屈んで首を傾げていた。



ー男の子、というのは的確ではなかったかもしれないが、このときの夢にはそう見えた。



バレちゃった、どうして見つかったのだろう、いやどうして見つかることを想定しなかったの、それよりもどうやって言い訳したらいいのー



色んなことが頭を高速でよぎり、夢は口をぱくぱくさせて顔を赤らめた。眉はハの字に下がっている。

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