第8話

鼓動はどんどん速くなり、うるさいほどに音を立てている。



彼の声だけ聞いていたいのに、自分の音が邪魔をする。



「お前はホント前向きというか…いやお前みたいなヤツを後輩に持って俺は幸せだな」



「僕もですよ先輩。ラブラブですねっ」



「やめろよキモい。お前が言うとガチっぽい」



「わぁーひどいなぁ(笑)」



談笑しながら夢の横を通りすぎていく。



夢は鼓動が漏れ出そうで、口を手で押さえて息を止め俯いた。



二人は夢には気づかず廊下を歩いていく。



(…どこの部署かだけでも知りたいな……)



珍しく積極的に夢は動いた。



それほどに彼の声は、声フェチの夢にとって極上なものだったのだ。

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