第7話

声はどんどん近づいてくる。



誰もいない廊下で立ち止まっていては不審に思われてしまう。



夢は咄嗟に防火扉の窪みに隠れた。



そっと顔半分で覗いてみると、廊下の角を曲がって二人の男性社員が姿を現した。



「僕らの取り扱ってるモノって結構毎日使うじゃないですか。だから僕はやっぱ機能性を重視したいんですよね」



(あの人だ…)



背の低い方の人。



細身で、丸い頭にさらさらした黒い髪。子供がそのまま大人になったような整った顔立ちで、少年のように目を輝かせて隣の人と話している。



(芸能人みたい…それに…なんて声……)



成人男性にしては少し高く、それでいて鼻にかかるような甘い声。



特徴的な彼の声音は、夢にとって極上だった。

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